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オリハルコンの女~ここから先はわたしが引き受けます、出来る限りではありますが~  作者: 五十嵐 あお


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トビアスの話によると隣国での豆乳作りは大雑把なものだった。否、もしかすると丁寧に作られているのかもしれないが、トビアスが記憶している部分だけではどうしたってそう思わざるを得なかった。


『沸かした熱湯に豆を入れて長時間煮て、布で濾す』 ― 大まかには合っていそうだけれど、色々違うとでも表現すればいいのだろうか。


そこで薫は実験も兼ねて、トビアスの話を参考にした体で夕食前におぼろ豆腐作りを試してみたのだった。水に浸しておいた大豆は夏ということもあり、ジョイスとハーヴァンがマッシャーで頑張れば潰せる程度にはなっていてくれている。全部は大変そうなので、この日使った大豆は半分。それを水で溶いて焦げないよう鍋で煮立たせた。


学生時代の友人が、この液体が焦げやすいのであまり煮立たせなかったことがある。そして、その豆乳を飲んでお腹をこわしたという話を思い出しながら、薫は目の前で作業を頑張ってくれているハーヴァンを応援したのだった。


「布で濾した後の残りをトビーの国ではどうしているのかしら?」

「農地に撒いていたような…」


作り方同様、トビアスの発言は大まかな感じだったが、こちらは前世でもそうすると聞いたことがあるので正しいと薫は思った。しかし、折角ならハーヴァンも戻って来たことだ、生おからからおから粉を作ってドーナツもいいかもしれない。左利きのハーヴァンは相変わらず右手の強化の為、お菓子作りを進んで手伝ってくれているのだから。


豆乳やおから、これからの大豆生活を考えると、サブリナはどうでも良いと言っていたがオランデール伯爵領でこれから作られる大豆もこちらで仕入れたいものだ。


その前に今日はおぼろ豆腐擬き。

テレビでは黒酢、醤油、ごま油、ネギを器に入れて、そこに豆乳を注ぐとふわふわ固まっていたが…。失敗して固まらなくても中に入っているものが美味しければ、それはそれで何とかなる。

そこで薫はネギをゴマと油で炒めたものとバルサミコ酢と塩を適当な器に入れ、豆乳を流し込んだ。そしてかき混ぜると、ほんのり固まった手ごたえがやって来た。


完全には固まらないどろどろ感。

薫は台湾で本物を食べたことがなくて良かったと思った。本物を知っていたら、飽くなき追及をやりかねなかっただろう。テレビ画面で見ただけなので、味も硬さも想像でしかない。ただその画面に疑問を抱いたこともあった。朝食屋のおぼろ豆腐なのに、どうして小籠包もそこにいる客達は頼んでいるのかと。まあ、美味しいからその組み合わせになったのだろうが。小籠包というか、蒸し餃子は今後の課題として、この日は早速その場にいた全員で夕食前にもかかわらず試食をしたのだった。


「甘くして飲むより、こちらの方が自分としては好きだ」

「トビーの国では砂糖を入れるのね」

「ああ」

「この間の乾燥エビも一緒に炒めて入れたら美味しいかも」

「確かに。次は色々持って来るから試せそうなものがもっと見つかるかもしれないな」


豆乳を飲む文化からやって来たトビアスが、おぼろ豆腐擬きに高評価を付けてくれ薫は嬉しくなった。その表情を横目でハーヴァンは見て、ノーマンが不在の今、自分が鍛冶職人に大豆を潰す機械製作を依頼しなければならないと感じたのだった。


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