表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オリハルコンの女~ここから先はわたしが引き受けます、出来る限りではありますが~  作者: 五十嵐 あお


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

531/673

とある国の離宮16

惚れた腫れたは当座の内。直ぐに飽きがこなかったとしても、愛情が無くなるということは男女二人の関係が終わりへ向かうことを意味するように思える。だから、利益を生む為という契約で男女二人を結ぶのは案外良いことにテレンスには思えた。貴族である限りは、何等かの利益を生もうと努力し続ける。だから契約ありきの政略結婚をした二人も利益という同じ目的の為に関係が続くように思えるのだ。


しかし長い人生。共に過ごすならばそこに思い遣りや相手を尊重する気持ちがあった方が良いに決まっている。政略結婚をする二人が早くから茶の時間や共に外出することで、互いを知り良い関係を築こうとするのは当然のことだろう。


テレンスが知り、参考に出来る最も近くで見ていた婚約者同士の姿もそうだった。政治的に決められた相手だったとしても、様々な交流の中で互いを知り合おうとしていた。それに、スカーレットだけではなくアルフレッドも貴族学院に入学した頃迄は間違いなく親愛ではなく愛情を持っていたはずだ、この先も共にあろうとする。それだけではない、共通認識として国を更に良くし発展させたいと願っていた。


(ああ、何て結果を招いてしまったんだ。側近として止めるどころか、助長するようなことをするとは…)

学生だったから許される、そんな言葉で済まされないことを本当にテレンスはしてしまったのだ。


マリア・アマーリエの夫に納まらなければ、既にたいして残っていないものすら失うテレンス。アルフレッドの政略結婚を守れなかった罰は、自ら政略結婚に突き進み利益を齎すことだ。失敗してしまった主君を横目に自らは成功させなければならないとは。しかも間近で二人が壊れる様を見ていた分、多くを得、活用出来るとは皮肉なものだ。

そして今こそ活用すべきタイミングだとテレンスは感じた。


マリア・アマーリエの発した『利益の為』という言葉。それは事実だ。しかしそれだけでないことをマリア・アマーリエに今伝えなければならない。


「リエー、わたしの家は国内で一、二を争う侯爵家です。こう言うと聞こえは良い。けれど、実際には三番手の侯爵家がかなり離れているからです。そして一、二を争っていると言っても、常に二位。一位の家は実に強固で…」

「その家はあなたが傷付けてしまった幼馴染の家ね」

「はい。彼女のご両親は国を跨いでの政略結婚です。公爵家出身の夫人は王族の血も引いていました。似たように思えませんか、わたし達も」

「ええ、何となく」

「お二人は政略結婚ですが、恋愛結婚ではないかと思う程仲が良かった。子供だったわたしの目から見ても」


テレンスは子供の頃に見たキャストール侯爵夫妻の話をマリア・アマーリエに聞かせたのだった。二人の婚姻が如何に両国に貢献したのかを。


「民からも二人の婚姻は祝福されたそうです。でも、不思議なのは二人が恋愛の末結ばれたとしばしば勘違いされること。二人の愛が両国に恩恵をもたらしたと思われていることです。リエーの立場を考えれば、恋愛結婚をしたと思う人間はいないでしょう。でも、わたしはいつかそう勘違いされるようになりたい。確かに利益の為の婚約、そして婚姻です。けれど、その利益で幸せを感じる人を多くしなければ。人は不幸な時に他者の幸せを歓迎できません。そしていつかわたし達の愛が恩恵をもたらした、二人は恋に落ちたから結婚することになったと思ってもらいましょう」

「中央にいない末姫の婚姻なのに壮大ね」

「いくつも国を跨ぐ婚姻ですから。そうそう、わたしが欲する利益の一つにあなたが楽しい毎日を過ごすというものがあります」

「テリーがそれを欲して何の得になるのかしら」

「簡単なことです。あなたが楽しそうならば、わたしが幸せを感じます。先程の件、考えておくではなく、許可してもらえませんか?」


大切なことは話し合わなければならない。特に二人の為のことは。

すれ違いが生じる前にアルフレッドとスカーレットがもっと話し合う機会をテレンスこそ作らなければならなかった。スカーレットの表情には出てこない感情を読み取るべきだったのだ。幼馴染として、友人として。


幸いなことに、この二人だけの空間でマリア・アマーリエの感情は多少だが表情に出てくれている。だから先程の利益の為と言った時と今の表情の違いがテレンスには見て取れた。


「リエー、あなたの頬に口付けたくなりました」


『利益の為』を良い意味で捉えてもらう為にもっと話をしなければいけないと分かっているのに、感情の変化を表すようなマリア・アマーリエの頬にテレンスは口付けたいと思ってしまったのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ