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オリハルコンの女~ここから先はわたしが引き受けます、出来る限りではありますが~  作者: 五十嵐 あお


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ノーマンが王都へけじめをつけに向かった翌日、デズモンドをアドバイザーに迎え薫は会議を開いた。薫とデズモンド以外の参加者は、ナーサ、ジョイス、ハーヴァン、リアム、そして一応ケビン。ケビンに何故一応が付くのかというと、意見は望めないが、ノーマンの上司的な立場であるからだ。


「じゃあ、ノーマンとサビィはデキてるってことだ」

デズモンドのフランク過ぎる物言いに、ジョイスとハーヴァンは咳払いをし、ナーサは呆気に取られた。


「あなたの言葉ではそうなるのかしら。でも、わたしの言葉では気持ちを確かめ合ったになるわ。それで、いつかはその先へ進む為にノーマンはサビィのご両親の所へ向かったの」

「ノーマンはお堅い性格なんだな」

「それもわたしの言葉では誠実」

「分かったよ、それでその誠実なノーマンの話をしたのはどうして?」

「きっとその内結婚式が必要になるような気がして。ノーマン達だけでなく、キースとサラも。それでファルコールではどんな結婚式が良いのか意見を貰えたらと思って」


当然ながらファルコールには大きな教会も、歴史ある建造物の教会もない。あるのは可愛らしいと純朴そうなが三対七くらいで混じった小さな教会が一つだけ。


前世で結婚しそうになかった薫は、結婚式への夢を描いたことがない。寧ろ、招待されてしまうと出費が嵩んで痛いという思いしかなかった。だから薫から結婚式への良いアイデアは無理。そこでこの会議を開いたのだ。けれどサブリナとサラに聞くのは何か違う気がして、この面子になった。


「それで、どうして俺を?」

「デズは沢山の女性の夢を聞いていそうだから。結婚式は女性の夢の一つだと思う、だから何か良いヒントを持っていそうだと思ったの。わたしも考えたのだけれど、あまり良い案が浮かばなくて」


デズモンドを始めそこにいた全員が、スカーレットも女性なのにそう言った理由を察してしまった。過去が原因で、スカーレットは結婚式への夢を語れなくなってしまっているのだろうと。そもそも王族との結婚に個人の意見はあまり反映されない。対外的な思惑など、個人よりは国を優先すべきことばかり。飾られる花ですら、提供する貴族家の意図が入るものだ。スカーレットの希望は精々ドレスのデザインくらいで、生地に散りばめる宝石は見えない意図で縫い付けられる。それでもその未来を信じていた頃は、その限られた中で希望を抱いていたのだろうが…


「沢山の女性の夢か。でもみんな最終的には幸せになりたいんじゃないかな。好き好んで不幸になりたいっていう女性に会ったことは、俺はないよ。ねぇ、キャロル、俺は沢山の女性のことより、俺のお姫様のことを知りたい。本人達だけが神に誓えばいいようなことに、どうして誰かを招待するんだと思う?キャロルだったら、どうして?」


デズモンドの発言にジョイスはやられたと思った。聞き上手ではなく、デズモンドは聞き出し上手なのだ。しかも、巧みに自分の意見を織り交ぜながら。それが相手を心地よくし、全てを話させしまうのだろう。あの顔と表情で『俺のお姫様』なんて言われたら、大抵の女性は落ちてしまう。

デズモンドと会話をする女性の表情が楽しそうだったのは当然だと、その中に入ることでジョイスは実感したのだった。そして、本題に対しスカーレットがどう答えるのか気になった。


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