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オリハルコンの女~ここから先はわたしが引き受けます、出来る限りではありますが~  作者: 五十嵐 あお


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焦ることなど無かった。そもそも焦る必要を感じたことが無かった。

公爵家に生まれ、アルフレッドの側近になり、誰の目にも順風満帆に見えていただろうジョイスの今まで。焦りという言葉とは無縁に等しかった。


勿論ジョイスは完璧ではない。だから不足があれば補ってきた。自分ならば必ずやり遂げられると信じて。それが努力なのか持って生まれた底力や才能なのかは気にも留めず。

問題が起きた時でも焦らなかった。焦りが失敗を生み出すと知っていたからだ。寧ろそういう時こそ冷静に対処することを心掛け続けた。だからあの会議の時も、事実が明るみになる中で冷静さを失なわないようにしたのだろう。とんでもない過ちを犯したと気付いてしまったというのに。そして冷静だったからこそ、自身の進退もすんなりと口に出来たのだ。


それがファルコールに到着して早々焦りを感じている。


例えるなら今までのジョイスは、アルフレッドを中心とした物語の中でそれなりに重要な役割を与えられた中心人物の一人だった。未来を切り開き、国を動かしていくという物語の。しかし途中の宿屋でルアンに言ったようにジョイスは王子でもなければ、ここでは主要な登場人物の一人でもない。だから物語はジョイスの登場を待つことなく、先へ先へと進んでしまっている。

謂わば設定が出来上がっている舞台に、ジョイスは何の役名もない上に話のタイミングを無視して上ってしまった様なもの。だから舞台から消えてもどうでもいい存在にならないよう、自ら役割を作らなければならない。


今までは仕えてくれていたハーヴァンから、現状を報告させるのではなく教えてもらい出来ることを探していかなければならない。誰もリプセット公爵家のジョイスだからと、何かを用意してくれるのではないのだ。


そして焦りは碌なことに繋がらないと分かっていたのに、感情が先に動いてしまった。ジョイスはファルコール到着日の夜、キャロルを衝動的に呼び止めた。何を話したいかまとめてもいないというのに。


何の脈略もなく『ずっと好きだった』というには、見えないようにしているキャロルの後ろのナーサが気になり過ぎる。だから仕切り直す為にも二人で話す時間を得ようとした。


「明日、出来れば午前中、二人きりで話をしたい。今までの謝罪と、…話したいことがある」

「分かった。じゃあ午前中に。あなたの話が終わったら、ハーヴァンにも加わってもらいましょう。そして、今後の計画について相談をさせてちょうだい」


時間は貰える。けれどキャロルの話しぶりでは、まるで業務の確認のようだとジョイスは感じたのだった。

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