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オリハルコンの女~ここから先はわたしが引き受けます、出来る限りではありますが~  作者: 五十嵐 あお


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薫の要望にトビアスは部屋から乾燥エビの入った包みを持ってきてくれた。そして心配そうに『無理に食べなくてもいい』と言いながらサイズがまちまちのエビを見せてくれた。


「トビーはどうやって食べるの?」

「そのまま」

「じゃあ、わたしもそのまま食べてみる」

「キャストール侯爵家の人間はエビを食べることに抵抗がないのだな」

「それはどういうこと?」

「侯爵が案内役に付けてくれた者も抵抗なく食べていたから」


薫は振り返り少し離れたところにいたノーマンの顔をじっと見た。するとノーマンは微かに頷き、肯定の意を返してきたのだが…。

どういうことだろうか。キャストール侯爵家の食事に乾燥エビが出たことはない。


「ノーマンもこのエビを食べたことがあるの?」

視線と仕草だけで会話をするには無理があるので、薫はノーマンに質問をぶつけてみたのだった。


「移動中に川で取れれば、火で炙って食べます。我々の間では、体に良い食べ物で知られていますよ。でも、海のものは初めて見ました」

そうだった、海だけではなくエビは川にもいた。だからトビアスと共にファルコールへやって来たAは抵抗なく渡されたエビを食べたのだろう。ノーマンの話からすると、栄養補給として川エビを彼らは食べていたようだし。


スカーレットの年齢の都合アルコールは未だなので忘れていたが、川エビのから揚げは薫のおつまみの定番だった。トビアスから渡されたエビも川エビに似ているので、フライパンで炒ったら香ばしさが増すかもしれない。そう思った薫は一つだけ口に入れ塩味を確認すると、早速キッチンへ向かったのだった。


乾煎りした乾燥エビからは直ぐに香ばしい匂いがし始めた。このまま出してもいいかもしれないが、自家製ハーブソルトを少しだけ最後にまぶして提供するとトビアスが驚きながら薫を見つめた。


「今まで食べていたものが勿体なく思える。こうして食べれば良かったのか」

「ノーマンが炙って食べていたと言ったから、それを参考にしてみたのだけれど…、正解かしら?」

「ああ、すごく良い」


前世で『ビールのつまみには川エビでした』とは流石に言えない薫。そこで、直前のノーマンの言葉で誤魔化してみたのだが、トビアスの様子からはどうやら上手くいったようだった。


「ねえ、トビー、もう少し貰ってもいい?みんなにも食べてもらいたいから、夕食の食材として使いたいのだけれど」

「是非使ってくれ。どんな料理になるのか楽しみが増える」

「ケレット辺境伯領から来ているスコットやキース達が気に入ってくれる料理になるといいのだけれど」

「君は色々気遣ってくれるんだね」

「モノを奪い合って争いが起こるよりは、過不足を上手く解消する為に他国と協力体制を築く方がいいもの」

「君の視点は、どこに居ても国を捉えている。過去の君が無駄になるどころか、未来の為にとても有能だ」


薫としてはこの世界の様々な食材を得たいという願望を、ちょっと格好良く御大層に言ってしまったのだったが…。トビアスはそれを随分と買い被ってくれてしまったのだった。しかし、それはトビアスだけではない。当然ナーサはうちのお嬢様は、といつもの件を心の中で呟き、ノーマンは誠心誠意仕えなければと気持ちを新たにした。加えてサブリナはスカーレットの志に自分も協力したいと考え、ハーヴァンは狭い世界を望んだ未熟な考えの自分を反省したのだった。


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