表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オリハルコンの女~ここから先はわたしが引き受けます、出来る限りではありますが~  作者: 五十嵐 あお


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

460/673

252

ハーヴァンは確かにスカーレット・キャストールを知っていた。しかしそれはハーヴァンが見聞きし、自分の中で作り上げたスカーレット・キャストール。本当にそれで知っていたと言い表すことが出来るのだろうか。しかも、その作り上げられた印象の上に今のキャロルを積み上げてしまっている。


これでは駄目だ。知っていると思い込むのではなく、知ろうとしなければ。


トビアスがみんなの避けていた質問を出来たのは、スカーレットから遠い存在だからだ。それは距離が遠いということではなく、スカーレットを中心に円を描いた時に、離れているという意味で。だからその円では、ジョイスはスカーレットに近くハーヴァンは遠い。付け加えるなら、デズモンドはトビアス並みに遠かった。


皮肉なことに円の中心、スカーレットに近かった者程今は遠い。アルフレッドが良い例だろう。そして家族のダニエルも。けれど、ジョイスはどうにかしてその円を出ようと藻掻いた。


デズモンドがファルコールで暮らすキャロルを簡単に受け入れることが出来たのは遠かったから。ナーサ達もまた、今のキャロルを受け入れるにはそれなりに葛藤があったから、呼び方一つ本人の希望になかなか応えられなかったのだろう。


ハーヴァンはここでトビアスとキャロルが続ける会話を聞くだけで良いのかと自分に問い質した。答えを考えるまでもなく、ハーヴァンもトビアスの様に積極的にスカーレットを知るべきだ。


「スカーレット様、今はそう呼ばせて下さい。わたしはあなたのことを全く違う視点で見ていた方達の側にいました。だから様々な事実が上手く繋がりません。ですので、二度とスカーレット様への理解を間違わない為にも、わたしも知りたいです、どうしてここでキャロルとして暮らすのか」


傍観者になってはいけないというハーヴァンの決心は、言葉になった。しかし、ハーヴァンの決心は薫がこれからしようとしていた説明のハードルを上げるもの。何故働いているのかというトビアスの疑問だけでなく、過去と今が繋がらないというハーヴァンの言葉にも適切に答えなくてはいけなくなってしまったのだ。

けれど考えようによっては、良かったのかもしれないと薫は思った。ここでハーヴァンの疑問にも答えれば、みんなが心の中で思っていることがクリアになるだろうから。



「上手く伝えられるか分からないけれど、トビーとハーヴァンの疑問に答えるわね。先ず、トビーの言う通り。わたしが働く必要はない。でも、それじゃあ詰まらないし、過去のわたしが無駄になってしまうわ」

「無駄?」


薫はこの路線で行けば上手く二人の疑問に答えられるかもしれないと微笑んだ。その表情は薫の満足感から出たものだったが、話し手をしっかりと見つめていた者達、それはトビアスやハーヴァンだけではなく同席していたスコットの心も鷲掴みにするものだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ