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オリハルコンの女~ここから先はわたしが引き受けます、出来る限りではありますが~  作者: 五十嵐 あお


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王都キャストール侯爵家3

スカーレットがファルコールへ向かってから、ダニエルは延べ三通の手紙をシシリアから受け取った。

一通目はスカーレットからの妨害行為を受けているというもの。

二通目はアルフレッドから何の知らせも送られてこないというもの。

そして、三通目は旅立ちを知らせる書状だった。


一通目を受け取った後、ダニエルは違和感を抱いたもののシシリアを励ます内容の返信をした。そこには一切スカーレットのことは触れずに。


それからしばらくして二通目の手紙はやって来た。前半部分はダニエルが知るシシリアらしい内容で、アルフレッドが様々な公務で疲れていないか、あまりの激務に体調を崩していないかなどの気遣いが多々綴られているものだった。もしダニエルがアルフレッドの様子で知っていることがあるならば教えて欲しいとも。

しかし、手紙を読み進めると、アルフレッドがシシリアと連絡を取れないのはスカーレットが裏で手を回しているのではないかとの疑いを滲ます文章も。直接的な表現でないにしろ、シシリアの中で上手くいかないことには全てスカーレットが関わっているという気持ちが窺える内容だった。


貴族学院で常にアルフレッドと共にいたシシリアにとって、連絡が途絶えることは大きな不安となり圧し掛かったのは分かる。不安が増幅する中で、その矛先がスカーレットへ向かったことも。けれど、婚約者ではなくなったスカーレットにどうしてアルフレッドの行為を制限することが出来ようか。立場的にも王族と侯爵令嬢だというのに。


学院では感情的に当たるスカーレットを理性的に対処していたのはシシリアだったはず。その理性はどこへ行ってしまったのだろう。冷静になり、理性を働かせれば学生であるダニエルが知る情報など限られていると分かるだろうに。貴族学院へ通っているダニエルにアルフレッドの様子を知る術などないと。


ただその限られた情報の中に、数日前にアルフレッドがスカーレットの所在を知りたがったということがある。ダニエルがそれを知っているのは、確認する為の手紙が自分にやってきたからだ。


父ではなく、アルフレッドがダニエルに問い合わせたということは、王家とキャストール侯爵家の関係はスカーレットとの婚約が無くなったことで離れたということ。そしてアルフレッドは不思議なことにダニエルからの返信を急いでいた。学生の時にはあんなに突き放していたスカーレットの所在を知る為に。どうして今更気に掛けたのだろうか。


シシリアの養女先がいくら決まらないからといって、アルフレッドが今更スカーレットを再び婚約者にすることは考えられない。それは学院でのアルフレッドの態度を見ていた全ての者が思うところだろう。

何より、そうする為には違約金の三倍の金を動かさなくてはいけないことをダニエルは父から聞いている。違約金で既に個人の腹を痛めたアルフレッドに、更なる金を動かすことは厳しいはずだ。


では何故スカーレットの所在を確認したがったのか。

理由は分からないままだったが、ダニエルは事実だけを記した手紙を直ぐに送り返した。推測や己の考えを書くことはアルフレッドをミスリードすることに繋がってしまう。下手をすればそのことは王族へ虚偽の報告をしたことになりかねない。特に王家とキャストール侯爵家の関係が以前と変わってしまった以上、細部に至るまで気を付けなくてはならないと考え、ダニエルは報告書のような事実のみを並べた簡潔な手紙を返したのだった。


この手紙の遣り取りとアルフレッドが知りたがった内容はシシリアへは伏せた方が良いのは言わずもがな。

シシリアはアルフレッドが真に愛する女性。対してダニエルは数家ある侯爵家の息子に過ぎない。そんなダニエルへ手紙を出したアルフレッドが、シシリアへ出さないのにはそれ相当の理由があると考えるべきだ。加えて、今更スカーレットの情報を問い合わせてきたことも。


そう思ったダニエルは二通目の手紙に対する返信を当たり障りのないものにしたのだった。一通目同様、スカーレットのことには触れず、自分を磨きながらアルフレッドの便りを待てばいいのではないかと。


そして久し振りにやって来た手紙には、『今までありがとう、旅立つことに致しました』とだけ書かれていた。

どこへ、何のために等の記載は一切ない短い文面というよりはメモ書きのような手紙だった。

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