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トビアスの三国を結ぶ物流計画。実現すれば大きな利益を生む足掛かりになることは間違いない。何故なら、この国と自国では言語もビジネスに対する考え方も違うせいか、あまり事業での交流が無かったのだ。
しかしセーレライド侯爵家はオランデール伯爵家と既に数年取引を行ってきたことで、それなりに情報を蓄積してきた。商業法や、輸送費に対する考え等を。
たった一貴族との取引で得る情報は少ないが、そこから周辺のことを知るには『輸送』は丁度良かった。オランデール伯爵家は輸送に出入りの商家を使っていたが、セーレライド侯爵家は違う。出入りの商家という点では同じだが、そこに侯爵家の手の者もしっかり紛れ込ませていたのだ。
その者から時折書類を確認する為にオランデール伯爵家からやって来る女性がいると聞いていた。しかもその女性は言葉や書類作成能力に長けていて、取引に穴など開かないよう取り計らっていると。
折角この国を公式に訪問することになったのでその女性に会ってみたいと思っていたが、まさかファルコールで会うことになるとはキャストール侯爵家へ向かうまでトビアスは全く予想もしていなかった。
それだけではない、キャリントン侯爵の腹心と呼ばれるデズモンド・マーカム子爵までいるとは。しかも昨夜の様子からするに、マーカム子爵はトビアスを心から歓迎などしてくれていない。表情は男性でも恋に落ちてしまうのは仕方がないと思えるほどキラキラしいが。
序に厩舎の案内を快く引き受けている体を取っているこの男も。
「この三頭は駿馬です。と言っても内二頭は療養中のようなものですが。そして、その内もう一頭やって来ます。そしてこちらの二頭は隣国のケレット辺境伯領から来た山岳用の馬。脚の太さが全く違うのが見て取れると思います。これらは皆雌雄ですから、これから繁殖を目指すつもりです。医師のスコットさんは馬の出産も対応出来るので、繁殖に際しては力を借りれます」
「この山岳用の馬がこれから増える予定は?自分の計画ではこの山越えが輸送ルートにおける一番の問題だと思っています」
「ファルコールの馬も足が太めなガタイの良いタイプですので、山越えは問題ありません。今もキャストール侯爵領から隣国のケレット辺境伯領までの定期馬車の運行はこの馬達が担っています。それにその警備はキャストール侯爵家の私兵が。まあ、キャストール侯爵領とケレット辺境伯領間では既に輸送体制は出来上がっているようなものです」
人当たりの良さそうな顔で馬について説明するハーヴァンが言った最後の言葉は、もう出来上がっていることだからおまえは不要だと言っていると受け取るのが正解なのだろうかとトビアスは考えながら注意深く馬の脚を見た。
こんなに長々と書いていますが、ようやく最初に出てきたことを利用出来る段階に到達したようです。




