王都リプセット公爵家17
シシリアへ贈った首飾りの宝石が何かをジョイスがアルフレッドに確かめることは結局なかった。それよりも知りたかったスカーレットへの贈り物が何を意味するかも。
幼馴染で友人のアルフレッド。しかし、アルフレッドは王子でジョイスはその側近。この事実は二人の間でアルフレッドへ常に拒否権を与える。けれどその拒否権は簡単に使えるものではない。アルフレッドがそれを乱用すれば、自らにどんどん孤独を与えてしまうからだ。そして拒否権を使われる可能性を知るジョイスも、どこまでならば大丈夫か考えながら質問をしなくてはならない。そもそも未来の王となるアルフレッドは孤独な存在。追い打ちを掛けるように、自らの拒否という姿勢で孤独を深めるようなことにならないよう配慮すべきなのだ。
使えるから存在する拒否権。それなのに、使う側、使われる側、双方にとって扱いが難しい。だったら最初からなければいいと思うが、そうもいかない。これがきっと長い間傍で友人として過ごしてきたジョイスにアルフレッドへの一線を引かせることの一つなのだろう。
今回質問したかったことに対して、アルフレッドが拒否権を使うことは明らかだった。否、アルフレッドは既に前回使っている。あの時は気付かなかったが、ダニエルの話を加味した今ではアルフレッドは話の内容を誤魔化すことで拒否したのだ。
完全な真実は闇の中。そして、アルフレッドも孤独という闇の中にいるのだろう。もしも、スカーレットがアルフレッドの傍にいたならば…。違う、スカーレットを排除したからアルフレッドは今の状況にあるのだ。
アルフレッドはスカーレットを求めている、どんな形であれ傍にいてもらいたいのだろう。そしてジョイスはスカーレットを求めに行く、傍にいる為にファルコールまで。ダニエルの言葉にぐらつかなかったスカーレットに感謝しなくてはならないだろう。それに、ファルコールでスカーレットを支えてくれる面々にも。ただし、デズモンドにはあまり感謝したくないが。
邸に戻ってから渡されたメッセージ。そこにはハーヴァンが二、三日中にファルコールへ向かう予定だと書いてあった。
ハーヴァンを突き動かす理由は何だろうか。今までの、ジョイスとハーヴァンの関係性ならば理由を問い、話させることは出来ただろう。でも、これからはそれが変わる。もしかしたら既に何かの変化があったから、ジョイスはつい最近までハーヴァンがファルコールへ向かうことを知らなかったのかもしれない。
ジョイスとスカーレットという関係性もジョイとキャロルに変わる。けれどアルフレッドはどうしたって王子という存在で、変わりようがない。簡単に住む場所も変えられなければ、行きたい場所へ行くことも出来ない。そんなアルフレッドが本当にスカーレットを望んだ時に使うものは『力』。しかし、力もまた拒否権に等しい。使ってしまえば、スカーレットの心はどうなるだろう。
スカーレットの心を守る、そしてアルフレッドに闇のような暗い孤独を与えないよう立ち回らなくては。そしてジョイスはハーヴァンに宛て手紙を書いた。
『ファルコールで待っていてくれ。長く待たせることはないから』と。




