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「そうだ、キャロル、どこかの国では身持ちの悪い女性は丸刈りにされるそうよ」
「それはあからさまね」
誰かが書いた物語を参考に作られた世界だ、そういうどこかの国の話も実際にあったことなのだろうかと薫は思った。そして薫がファルコールの参考にしているバーデンバーデンがあるドイツでは、昔アイアンメイデンという身持ちが悪い女性に使用した拷問器具があったという。
アイアンメイデン、即ち『鉄の処女』。薫は以前自分がオリハルコンの女とかオリハルコンの処女と呼ばれていたことが、まだましに思えてきた。拷問器具と同じ名前でこそこそと陰で呼ばれなくて良かったと。
「丸刈りは行き過ぎだけれど、覚えている?わたしが髪を短くしようかと言ったこと」
「ええ、勿論。既婚女性として結い上げる必要がなくなったら切ってしまおうかと言っていたわね。それにクリスタル様からのリボンも使いたくないって」
「使いたくないんじゃなくて、使う必要がなくなったら売ってしまいたいと言ったのよ」
「言い方は違っても、本質はわたしの言葉通りでしょう」
「まあ、そうかも…。でね、やっぱり切ってしまおうと思うの。ショートカットって、なんだか活発な感じがしない?」
「活発かどうかは分からないけれど、サビィにはとても似合うと思うわ」
「そう言うってことは、あなたにはわたしに思い描く髪型があるのね」
薫は勿論あるに決まっていると言う代わりに、目を輝かせながら大きく頷いた。サブリナが髪を短くしようかと言った時に浮かんだあの髪型が再び思い出されたのだ。
薫は早速ナーサに描くものを持ってきてもらい、あの映画であの女優がしていた髪型を描き始めた。しかしここで問題が。一生懸命描いても下手なものが上手くなることはない。ただ、丁寧になるだけ。それでもサブリナには是非あの髪型にしてもらいたいと、薫は途中ナーサに説明をしながら描き続けた。後はナーサがどれだけ理解してくれるかにかかっている。
「大切なことなので、キャロルの絵と説明からわたしが一度描いてもいいですか?」
「是非、そうしてちょうだい」
「すごく短い髪形なので、後で訂正が出来ないとまずいですから」
そして実は絵心があったナーサが描いた髪型を見た時に、薫は思わず声に出してしまった『麗しい』と。
「どうかしら、サビィ?」
「前衛的ね。離縁をしたわたしがここまで攻めた髪型にするのは悪くないわね」
この世界で女性がここまで短い髪形にするのはかなり挑戦的だ。でも、サブリナには間違いなくこの髪型は似合う。
だから薫は『今のあなたなら攻められるわ』とサブリナの背を押したのだった。それに本当に見たかったのだ、この髪型をする可愛いサブリナを。
数か月後、この髪型がサブリナにとって日々の生活を楽にしてくれるものになるとは、この時誰も思わなかった。その前に、数日後思いもよらぬことに発展するわけだが。
アイアンメイデン - とんでもない拷問器具なので調べる方はご注意を。
そして、そろそろこの話を書き始め一年を迎えようとしております。お付き合い下さる皆様、本当にありがとうございます。こんなに長くなってしまって…。本音を書くと、何度か『あれから~年後、』という出だして話を完結させてしまおうかと目論んだことがございます。が、そういう時に誤字脱字報告などをいただいたりしまして、ちゃんと書かなくてはと思っていました。ブックマーク、評価、感想、誤字脱字報告、わたくしのモチベーション維持にご協力ありがとうございます。




