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オリハルコンの女~ここから先はわたしが引き受けます、出来る限りではありますが~  作者: 五十嵐 あお


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王都キャストール侯爵家24

ダニエルが執務室を去ると、侯爵は再びスカーレットからの手紙に目を通したのだった。そこにはファルコールでダニエルと話し合ったことが箇条書きで分かり易くまとめてあった。しかも、一つ一つの項目に予想されるダニエルの動きまでを添えて。


残念ながら次期侯爵は未だ姉の手のひらで踊らされている感が拭えない。否、姉だけではないようだ。スカーレットの手紙にはダニエルからデズモンドの名をアルフレッドの前で言わせるのは効果的になるとサブリナが予想していると書いてある。


スカーレットとデズモンドがそう見えるように演じていたのだろうが、ダニエルは見事にその姿に嫉妬したのだ。互いに信頼し合っているからこそ、スカーレットに頼られる大人の男デズモンドに。

手紙にはそういうことが書いてあるが、侯爵の心は穏やかではなかった。

侯爵は手紙を引き出しに仕舞うとファルコールへサブリナの離縁成立の知らせを届け、戻ってきたばかりの遣いの者を呼んだのだった。


「それでお前の目から見た二人の様子は?」

「不思議と気が合っているように見えます」

「…困ったものだ。キャリントン侯爵に近すぎる男な上に、色々な意味で女を知り過ぎている」

「それも理解した上で、お嬢様は良好な友好関係をお築きのようです」

「本当に友好関係なのか」

「残念ながら、今はとしか言えませんが」

「今後は?」

「こちらも残念ながら、わたしには分かりかねます」


十年も婚約者だったアルフレッドから大々的に婚約破棄を言い渡されたスカーレット。ファルコールで新たな生活をスタートさせ、本人の手紙やケビン達の報告から楽しく過ごしていることが窺える。しかし楽しい生活を送っているからと言って、心の傷が完全に癒えたかは分からない。そこに女の扱いに長けたデズモンド・マーカムがスカーレットの住むファルコールの館の目と鼻の先で暮らしているとは。


「デズモンドという男はどこまで信用出来るだろうか」

「まだ分かりませんが、勘は鋭いと言いますか、伊達にキャリントン侯爵に重用されているわけではないようです。国王の遣いの者が商団の護衛としてファルコールを度々通過していることにも気付いています。勿論、ケビンとノーマン、そして我々の役割も早々に見抜いておりました」

「スカーレットは今までが今までなだけに、男女のことには疎いだろう。利用されるだけ利用され、捨てられでもしたらそれこそ立ち直れなくなる」

「…それが、その疎さが返ってマーカム子爵を翻弄していたようにも思えます」

「手練れと未熟者がそれぞれの素質で勝負しているということか。まあ、あと少しすれば、リプセットの小僧が番犬としてファルコールへ向かう。随分反省した後だから、良く働くことだろう。問題は番犬もいつ発情するか分からないことだな。今まで押さえつけられていた反動は大きそうだ。そこはしっかりケビンとノーマンに躾けてもらわねば」


手練れも番犬もお嬢様の前では、ただの男、それも純粋に愛を語る男になってしまいそうだと遣いの者は思ったのだった。

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