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オリハルコンの女~ここから先はわたしが引き受けます、出来る限りではありますが~  作者: 五十嵐 あお


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誰かのプラスが誰かのマイナスになる。まるで賭博場、カジノのようだ。リボンの意味を考えながらダニエルはそんなことを思った。


あの頃の自分達は貴族学院という閉鎖的且つ小規模なカジノの中にいたかのよう。失う一方のスカーレットと得る一方のシシリアという対照的なプレーヤーが存在するカジノの中に。そして貴族学院というカジノで大勝利を収めたシシリアはあまりの幸運に次の場へ売って出た。言うなればロイヤルカジノという名の次の場へ。片や大敗を喫し自らのその場を去ったスカーレットはバウンダリーカジノへやって来たというわけだ。


ただしここで二人の役割は変わる。シシリアは守られていたプレーヤーからただのプレーヤーへ。スカーレットはゲームを降り、運営する側へと。そう、カジノは慈善事業ではない。だからそこには運営する者が存在し、利益を常に求めているのだ。


貴族学院カジノの運営者達は、求める利益の為にイカサマを働いた。閉鎖的な上、自分達以外は学生ばかりの参加者。故意に一人の女性、シシリアを勝たせることは造作なかっただろう。けれどイカサマで勝ち続けたシシリアが、ロイヤルカジノへ何の力もなく向かったところで結果は明らか。出入りしている大人達とは経験値が違うのだ。ブラフは当たり前、寧ろその上で都合に合わせアライアンスをどうとでも組める者達ばかりなのだ。シシリアが得た大きな利益等一溜りも無かったことだろう。


掛け金が底をつき、自分自身をシシリアが金に替えなくてはならなくなる前にアルフレッドが取った行動は修道院へ送ること。カジノを退出するだけでは済まないと分かっていたからの手段だったと、今ならダニエルにも分かる。そしてイカサマがバレたカジノは信用を無くし一斉に首を挿げ替えられた。新たな運営者、父であるキャストール侯爵は外部からの貴族学院可視化に務め不正が起きようがないことで信用を取り戻そうとしている最中だ。


プレーヤーから運営者に役割を変えたスカーレットはこのファルコールを上手く回している。立場的に表には出ていないが、プレストン子爵から聞いた話にダニエルは驚いた。領民は税という名の掛け金をこのカジノに支払う訳だが、温泉施設事業や新たなキノコ栽培などそれなりにリターンを得ているのだ。宿泊業を営む者達も、温泉施設のお陰で利益が伸びているのだから、施設へ従業員を送るという掛け金など負担になることはないだろう。


プレーヤーが増えればカジノは賑わう。しかも大損することなく、楽しく遊べるカジノならば他へ行こうというプレーヤーもいない。そこでしっかり上前を撥ねるスカーレットの手腕は素晴らしいとダニエルは自分の姉ながら誇らしく思った。


だから…、だからこそ、言わなければいけないことがある。本当はスカーレットと二人きりの時にこの話は切り出したかった。でもその機会がいつ来るのかは分からない。そもそもそんな機会を得られない可能性もある。


「姉上、改めてお尋ねします。王都の侯爵邸に戻る気はありませんか?」

「マーカム子爵がこうして話し相手になって下さるもの、だから暫くはファルコールにこのままいるわ」

「分かりました。でしたら…」

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