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オリハルコンの女~ここから先はわたしが引き受けます、出来る限りではありますが~  作者: 五十嵐 あお


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王都リッジウェイ子爵家1

前リッジウェイ子爵はあまりにも順調に事が運ぶので、何だか不思議な気持ちになってしまった。向かっている先はサブリナにとり不名誉な離縁。それなのに、友人達が協力してその不名誉を一秒でも早く現実にしようと動いてくれている。


結婚して他家に嫁いでもサブリナが愛娘であることに変わりない。子供がなかなか出来ないことは勿論気付いていたが、子爵家に戻されないことから伯爵家で大切にされていると思い込んでいた。もっと気に掛けるべきだったというのに。その点、母親というのは鋭いものだ。ちょっとした表情から疑問を抱くのだから。そしてもう一人、年若いというのに他者の表情から何かを読み取ることに長けたスカーレットにも助けられた。子供の頃は良く笑い走り回っていたスカーレット。未来の王妃としての教育の賜物か、いつしか自分の気持ちや感情を顔に出すことはなくなった。それなのに他者の表情には敏感だとは。


現役を退くということでたまたま計画していた旅行。そこへ古くからの友人、キャストール侯爵がファルコールの館への滞在を持ちかけてきた。辛い経験をしたスカーレットを見舞う為にもファルコール行きを決めたのだが、その必要はなかった。久し振りに会ったスカーレットは昔の様な笑顔を取り戻し、王都で見掛けるよりも生き生きしていたのだ。不思議なことに料理をし、ファルコールの館の運営という仕事までして。


けれど、老いたる馬は道を忘れず。まだ若いスカーレットには似合わない言葉だが、婚約破棄で一瞬の内に吹き飛んだのは予定されていた未来だけだ。積み上げてきた王宮内での経験や学びはしっかりと本人の中に残ったのだから。


ファルコールと王都。どれだけ離れていようと、父であるキャストール侯爵の力を借りここまでしてしまうとは。しかも確執のあったリプセット公爵家の三男ジョイスともそれなりの関係を再構築したようで、爵位は下のキャストール侯爵が頼み事をし易いようにしてしまった。


「さあ、そろそろ失礼なご招待に、失礼にも遅れないよう出発しましょうか」

「ああ、クライド達が調えてくれた最高の舞台で終幕を演じられるのだからな」

「ええ、拍手喝采はないでしょうが、最高の報酬が得られるはずよ。サブリナの尊厳を掴み取るという」

「あの子は名誉よりも尊厳を選んだと書いていた。何年も何もしてあげられなかったんだ、これくらいは今日中に決めてあげよう」

「大丈夫よ、セーレライド侯爵家が来る前にオランデール伯爵家もこんなことは片付けてしまいたいでしょう。それに、あれだけ大々的にリプセット公爵夫妻が孫を待ちわびている姿を見せたのだもの。こちらは罪人よろしく、オランデール伯爵に許してもらいたいという体で臨みましょう」

「打ち合わせ通り、上手くやるさ。サブリナのことでどんなに腹を立てようとな」

「ふふ、心の中ではスカーレットお嬢様がキャストール侯爵に知らせてきた今後を思い浮かべればいいのよ」

「そうだな」


前リッジウェイ子爵夫妻は、表情は暗くしかし心の中は明るくオランデール伯爵家での茶会へ向かった。それも失礼のないよう十分に到着時間に配慮して。


ご訪問、ありがとうございます。そして誤字脱字、ありがとうございます。とても助かっております。暑くて、今日はもう何も浮かばない…と思う日も、誤字脱字報告を見ると何故かひねり出せる日があります。最近は冷房の効いた電車の中でもぼーっとしてしまって…。

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