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オリハルコンの女~ここから先はわたしが引き受けます、出来る限りではありますが~  作者: 五十嵐 あお


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ドミニクの滞在は三泊四日。

薫としてはドミニクだけならば問題ないのだが、他にも四人一緒となるとそうはいかない。


「お父様だけではなく、わたしにも連絡をくれたら良かったのに」

「久し振りの再会は驚きと感動が一緒の方が良いと思って」

「驚きはしたけれど、感動よりは慌ててしまうわ」

「どうして?」

「だって、皆さんをどうおもてなしするか急いで考えなきゃ、でしょ?」

「いいよ、別に。三人はそもそも辺境伯領の騎士だから野営ではなく屋根があるだけで十分だし、もう一人はどうしてもって言ってくっ付いてきたんだから適当で」

「そうはいかないわ」


こういう時に、時間をゆっくり使って寛いでもらえる温泉があって良かったと薫は思った。早速五人を温泉施設へ案内しようとした時だった、ドミニクから無理やりくっ付いてきたと紹介されたスコットが目を輝かせて薫に声を掛けてきた。


「キャロルさん、その入浴施設というのは最近ファルコールに出来たものですよね?」

「はい、最近出来上がったばかりのいつでもお湯に浸かれる施設です。良くご存知でしたね」

「実は商人の方から聞いて、是非訪れたいと思っていたんです。よろしければ、どういう施設か先に説明していただいてもいいですか?」

「勿論です。興味をお持ちいただくことはとても嬉しいので。騎士の皆さんにも知っておいていただきたい情報がありますから、まずはこちらでお茶とお菓子を」


薫はまずこのファルコールの館の住人とホテルの宿泊客用に入浴施設が三タイプあることを説明した。男性用、女性用、そして貸し切り用と。

「全てのタイプに三つのお湯が用意してあるわ。それぞれお湯に含まれる成分と温度が違うの」

「どうしてそれが分かったのですか?」

「一つは色が違うの。そして、残りの二つは入っていると分かるわ。片方は浸かっていると不思議なことに小さな泡が肌に付いてくるから。以前、少しだけ調べたことがあったのだけれど、こういうお湯を温泉と言い、それぞれに人の体に良い影響を与えてくれるそうよ」


『以前』は前世、『少しだけ調べた』はネットでなのだが、薫がさらっと話したせいかスコットはそこを掘り下げることはなかった。


「騎士の皆さんには一番温度の低いお湯がお勧めです。隣の宿舎の私兵の皆さんによると、傷や打ち身に効果があるみたいですよ」

38度の湯は酸性泉なのでその通りなのだが、この世界に泉質を分析する専門業者がいない以上濁した言い方しか出来ない。


「キャロルは俺と一緒に貸し切りを使うか?」

「わたしには特別に専用があるからドミニクと一緒に使う必要はないわ。もう、馬鹿なことを言って話を逸らさないでよ」

「本気なのに」

「余計悪いわよ、ドミニク。それでね、スコットさん。ここだけではなく、隣の宿舎のちょっと先にも大き目な入浴施設があるの。そこはファルコールの住民は無料で、他からやって来た人には入場料を支払ってもらっているのだけれど、ここと同じように三つのお湯が楽しめるようになっているわ。皆が安心して利用出来るよう私兵の方達が管理しているのよ。商人の方が話したのはそちらのことだと思うけれど、どちらも同じお湯だからここのを使ってみて」

「お湯の温度が突然変わったり、お湯そのものが出なくなったりはしないのですか?」


スコットの質問に正しく答えるならば、イービルのお陰で大丈夫、なのだが。流石にそんなことは答えられない。


「今のところ、いつも同じような温度でそれぞれの施設に十分行き渡るお湯が出ているみたい。不思議よね」

ここは薫にもどうしてか分からないという体で、不思議がる演出をするしかないだろう。そして別の話題で逃げることにした。


「ところで皆さん、食べられないものとかありますか?」

「だから俺も含めて皆何でも食べられるから安心しろよ」

「ドミニクはこう言っているけれど、遠慮はしないで下さいね」

騎士ではないスコットを含めて、本当に全員何でも食べられることが分かり薫は胸をなでおろしたのだった。

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