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オリハルコンの女~ここから先はわたしが引き受けます、出来る限りではありますが~  作者: 五十嵐 あお


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王宮では38

予定通りならば、ダニエルはファルコールに到着したはずだとアルフレッドは思った。ジョイスのように悪天候に見舞われなければ、ファルコールまでの街道は確実に計算出来る。キャストール侯爵家の私兵が所々に駐屯し安全が担保されている上に、街道整備を行った土木業者の技術が徐々に向上した結果だろう。しかも安全な街道上にある町や村は人流と物流が増え栄えていく。それはそこに暮らす人々への直接収入だけではなく、治める領主への税収にも反映してきた。

良い街道が利益を継続的にもたらす。だから領主たちはキャストール侯爵家から割り当てられた警備費用や修繕費用を出し渋ることはなかった。


これを国内全土に広げる予定だった。キャストール侯爵家の手を借りて。しかしスカーレットがアルフレッドの婚約者ではなくなってしまった以上、それは難しい。他領へキャストール侯爵家の私兵や技術力を持つ領民が入れる理由はもうなくなってしまったということだ。


「殿下、早馬でこちらが届けられました」


それは国交の無い国へ向かったテレンスからの一報だった。漸く届いたテレンスからの知らせは白か黒、どちらかの結果しかない。


アルフレッドははやる気持ちを抑えながら、王族としての美しい所作を忘れることなく開封した。どちらの結果であっても侍従の前で表情に出すようなことはしない為に。

そして結果は白。しかし、テレンスというカードを切った割には、そこに書かれている内容はこの国に旨味がないものだった。それでも結果としては良い。アルフレッドは侍従を下がらせると、内容を共有する為に視線でジョイスを傍に来るよう呼んだ。



「どうだった?」

「テレンスは婚約者の座を射止めた」

「そうか。良かったな」

「ジョイスも目を通してくれ。婚約者になってもテレンスの状況はこんなものだ。しかし、慶事として使いようはある。テレンスが行き来しやすいよう、キャリントン侯爵領から隣国までの街道整備をキャストール侯爵家に祝いとして主導してもらおうと思う。そこに技術者などを国からも派遣し、整備方法を学ばせる。それに、近々キャリントン侯爵家主催の晩餐会でこのことを発表すれば、丁度隣国から招かれた貴族家にも知らせることが出来て好都合だ」

「ああ」


アルフレッドの言葉にジョイスの反応が薄い理由は聞くまでもなかった。アルフレッドが一度もテレンスに祝福の言葉を贈らないからだ。仮令ここにテレンスがいなくても、結果に対し何か言うべきだとジョイスは思っているのだろう。

しかしテレンスの簡潔な報告書を見て『旨味がない』と真っ先に思ってしまったアルフレッドには、祝福の言葉を口にする権利はないように思えた。側近である前に大切な友だったテレンスすら政治の道具として見做してしまったアルフレッドから祝福されて嬉しいだろうかと。


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