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オリハルコンの女~ここから先はわたしが引き受けます、出来る限りではありますが~  作者: 五十嵐 あお


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王都リプセット公爵家16

母と共に取る朝食三日目。ジョイスは約束通り教えてもらうことが出来る『最後』を聞いたのだった。しかし、それは全ての中の最後ではなく、母が選んだ中の最後。全体の母数も分からなければ、その内容が全ての中でどれくらいの重みのものなのかも分からない。王宮を離れることが決まっているジョイスでもこんなにモヤモヤするというのに、たった一つしか聞くことのないアルフレッドはどう思うのだろうか。


それに母が意図もなく二日目、三日目の内容を選んだとは思えない。初日はジョイスの質問に基づいて話してくれたのだろうが、あとの二つは明らかにジョイスに問うているようだった。アルフレッドへのさじ加減をどうするのかと。


母の話した内容は初日よりも二日目、二日目よりも三日目と、スカーレットの関わりが見え辛くなっていく。ところが関わる貴族数が増えていくのだ。ジョイスが初日の宝飾店の話をしないならば、どちらをアルフレッドに当て、何を気付かせ次へどう繋げるべきかと。



「母上はどうしてこれらのことをご存知だったのですか」

「知らないでは済まされないからよ。リプセット公爵家に連なる貴族家を守る義務がわたくしにはある。同様に、上に立つ他の貴族家も自分達一門に関わることはご存知でしょう。スカーレットはわたくし達が上から眺めていることも理解した上で事を成さなくてはいけなかったのよ。見事なバランス感覚ね」


知らないでは済まされないという母の言葉がジョイスに重く圧し掛かってきた。あの頃のジョイスは知らないどころではなく、知ろうとすることもなくスカーレットを拒否したのだ。


「ご夫人方の多くは、スカーレットが殿下の婚約者ではなくなってしまって随分と落胆したでしょうね…。殿下の次の婚約者選びは本当に大変なことよ。だからこそ王宮内には特別職をスカーレットに与えてでも引き戻したいと思う者がいるのでしょうね、婚約者でなくとも国に尽くして欲しいと。キャリントン侯爵が打った手は良いとは言い難いけれど、スカーレットを王宮への人身御供にしないという点では、まあ、いいのかもしれないわね」

「…アルはスカーレットに二重国籍証明書を発行しました。それを今ダニエルが届けに向かっています。彼なりに、これ以上スカーレットが王宮に巻き込まれないようにする為だとわたしは考えています」

「そう。では、どうしてキャストール侯爵子息に特注品の贈り物を持たせたのかしら?」


デズモンドがあの宝飾店で贈り物を購入したことは、意図的にリークさせた可能性の方が高い。しかしアルフレッドは王族、おいそれと情報が漏れることなどないはずだ。


「ジョイス、本当に知らないのと、知っていても知らない振りをするのとでは雲泥の差よ。言ったでしょう、公爵夫人の情報は高いって」

「母上、では、教えて下さい。品質の良いアイスブルーダイヤを扱う宝飾店はどこか」

「馬以外のものということね」

「はい。スカーレットは今、指輪やブレスレットは身に着けないと思います。だから着けていてもそんなに気にならないネックレスを贈ろうと思いました。わたしの瞳の色で心臓の付近に揺れるネックレスを。常にスカーレットの命を守るよう目を光らせているという意を込め」

「…ジョイス、重いわ。普段使いの気安いネックレスというのはいいけれど、その理由は伏せておきなさい。そんなことを言ったら、恐ろしくてスカーレットは身に着けられないどころか受け取れないわ」


公爵夫人は夫の残念な贈り物センスが息子にはもっと進化して受け継がれてしまったことに心の中で溜息を吐いたのだった。

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