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オリハルコンの女~ここから先はわたしが引き受けます、出来る限りではありますが~  作者: 五十嵐 あお


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王都リプセット公爵家11

自室の静寂の中、ジョイスは日々繰り返す情報整理を頭の中で行った。

少し前に王都の女性達の間で噂になったことがある。とある装飾品店に恋多き男から注文が入ったというものだ。わざわざ情報が出回るようにしたのは、贈る女性を他の男の目から守る為。自分の女に手を出すなと言いたいのだろう。

しかしその女性は、王都から最も離れた場所にいる。手出しを簡単に出来る距離にはいない。だから、言いたいことは『やって来るな』ということ。


それは誰に対して?


婚約破棄という汚点が女性に付いたことで手が届くかもしれないと勘違いしてしまう者へだろうか。社交シーズンを捨てて、献身的に彼女を支えれば自分にもチャンスがあると考える者もいるはずだ。特に、貴族学院で流されて彼女、スカーレットに当たりをきつくしてしまった者には挽回するチャンスでもある。


しかし恋多き男、デズモンド・マーカムは雑魚など眼中にないだろう。言葉にしたら申し訳ないが、デズモンドのような男には多くの男が雑魚だ。勿論、スカーレットの心を打ち砕き続けたジョイスは雑魚以下。それでも、デズモンドのメッセージは自分へ宛てたものだとジョイスは確信している。ファルコールでキャロルと名乗る今のスカーレットを知る者は限られているのだから。


しかもデズモンドは切り札を出してきた。

恋多き男は甘い言葉や贈り物の効果的な使い手として王都の社交界で有名。言葉はその場限り。贈る物は花や菓子のようないずれ消えていくもの。全てがデズモンドの恋と同じで時間の経過と共に無くなるものばかりだった。そのデズモンドが形ある輝くものを贈り物として購入したのだ。噂の中には『真実の愛で捨てられた女性が恋多き男の真実だった』などというくだらないものまであった。


『やって来るな』という牽制にも近い行為。しかしどんなにデズモンドに出遅れようと、ジョイスは諦めるつもりはない。しかしデズモンドが切り札を出したことで知ってしまった事実がある。アルフレッドが個人予算の決裁書類にサインをした時に気付いてしまったのだ、ダニエルに手渡したスカーレットへの贈り物購入店も同じところだと。


アルフレッドは『スカーレットが好きな夜空の星シリーズ』と言った。側近でなければ、ジョイスは今更そんなことを言うのはどうかしてると怒鳴ったかもしれない。しかも後で知ったことだが、ペリドットには夫婦愛や幸福という石言葉があるという。アルフレッドの真意は何だろうか。あの時アルフレッドはペリドットよりも先に黄緑、この色をスカーレットが気に入ったとしてもと色について話した。贈り物が手配され、それはスカーレットがコレクションしているシリーズ、けれど本来の宝石ではない特別なもの、そこに何か意味がある。更にはジョイスに比べるまでもなく、短期間の付き合いでしかないデズモンドがスカーレットのコレクションを知っていた。それは、スカーレットの気に入っているものをデズモンドが知る程の仲になり始めたということだ。


距離が、時間が、本当にもどかしいとジョイスは思った。


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