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オリハルコンの女~ここから先はわたしが引き受けます、出来る限りではありますが~  作者: 五十嵐 あお


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妻にする女性と恋愛相手は別。浮気男の常套句のような言葉、そしてその変化球を薫はたびたび聞いていた。

一度目の結婚に失敗したあの男は『妻は離婚してしまえばそれきり。でも、薫とは終わりを迎える関係にはなりたくない』と言い続けたのだ。


薫はその言葉を信じるというより、自分という存在が報われる為に信じることを選び続けた。事実を信じる為の根拠として。そう、あの男の妻も恋人達も終わりを迎えてしまえばそれでおしまい。けれど、薫はずっと傍にいたのだ。否、傍に居続けてしまった。


盲目的だったあの頃。しかし今なら冷静に捉えることが出来る。妻、恋愛相手、そして都合の良い女。この三者を上手く使い分ける男がいると。

ジャスティンもその類の男のようだ。世界観が違う分、それぞれの女性が担う役割は違うようだが。ただ間違いなく言えるのは、サブリナには妻と都合の良い女という役割が与えられていること。そして、オリアナには恋人とジャスティンの手先といったところだ。


ここで報告書にまるで浮き上がるように書かれている新たな女性がいる。

アイリスというジャスティンより五つ年下の娘。オランデール伯爵家の遠縁にあたる男爵家の長女だ。

報告書はオリアナを恋人と表す一方、アイリスには恋をする相手とある。


恋をするから恋人。恋しいと思うから恋人。薫はそんな風に考えているのだが、報告書はそこを明確に使い分けている。恐らく、スカーレットが読むものだからそう書いたのだろう。言ってしまえば、ジャスティンとオリアナは関係があり、アイリスとはないということだ。そしてサブリナ、オリアナ、アイリスの三人はオランデール伯爵家で顔を合わせている。ジャスティンがサブリナの為に話し相手としてアイリスを時折邸に招いているのだ。


サブリナはジャスティンが一番の理解者だと信じ、伯爵家から追い出されない為に指示に従ってきた。

オリアナは恐らくジャスティンからの指示と自分の感情から、真綿で首を締めるようにサブリナを追い込み続けてきた。

アイリスはジャスティンのサブリナへの優しさだと思いながら、話し相手としてオランデール伯爵家を訪れていた。


事実と薫の予想を足すと、こんなところだ。

では、どうやってこれらのことをサブリナへ伝えるべきか。薫の口から報告書の内容を伝えてしまえば、どうやっても事実だけを話すことは難しい。薫が言葉にすることで少なからず憶測や考えが混じってしまうだろうから。


だから文字を見てもらうしかない。


報告書に目を通す前にサブリナから貰ったハンカチ。そのお礼がこの報告書になってしまうのはとても残念なことだ。けれども、これが薫のサブリナに出来る重要なお礼となるだろう。サブリナが傷付こうとも。

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