表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オリハルコンの女~ここから先はわたしが引き受けます、出来る限りではありますが~  作者: 五十嵐 あお


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

302/673

169

オリアナをサブリナ付きの侍女にするというメイド長の決定に、当時多くの使用人達が表情には出さないものの驚いたのだった。特に貴族家出身者でない者達が。

理由は簡単。オランデール伯爵家、というよりメイド長の下では能力よりも出自が重要だからだ。それが名のある商家とはいえ平民のオリアナがサブリナの侍女になるという。どう考えても奇妙な人選に当時のことを多くの使用人達が覚えていた。

けれどサブリナがオランデール伯爵家に嫁いでから数年後、誰もがメイド長の先見の明に驚いた。平民出のオリアナで丁度良かったのだと。


跡継ぎを産むこともなければ伯爵家の仕事もままならないサブリナに仕えるのは、貴族出身の娘には外れ仕事のようなものだ。特に同じ爵位出身の娘ならば、外れというより屈辱に感じるかもしれない。余計な摩擦を生まない為にも、メイド長の人選は正解だったと皆理解したのだ。子を産む産まないは流石に見極められないが、結婚前にオランデール伯爵家を訪ねてきたサブリナを見るだけで力量を推し量り、敢えてオリアナを付けたのだと。


最初は疑問を抱いた使用人達が数年後には納得する。本当にサブリナが伯爵家の仕事を出来ないのならば、その流れもありだろう。しかし、サブリナは優れた女性だ。


報告書にはオリアナをサブリナの侍女に推薦したいと言ったのはジャスティン。そのことを相談され取り計らったのがメイド長とある。二人の思惑は別物だったろうが、奇しくも絶妙に重なり合ってしまったのだろう。否、メイド長という立場柄、本当に人を見る目、更には邸内のことへは誰よりもセンサーが働いていたに違いない。ジャスティンとオリアナのことなどメイド長は知っていたと考える方が正しい。誰かに勘付かれるよりは、オリアナをサブリナ付きにしてジャスティンの近くにいてもおかしくないようにしたと考えるべきだ。オリアナを選んだのはメイド長としたのもその為だろう。


追記としてメイド長も子爵家出身とある。報告書は事実のみの記載。けれども、能力よりも出自を優先するメイド長と先に触れられているのだ、考えるまでもない。メイド長には大切な伯爵夫人が産んだ伯爵家の長男に子爵家の娘が嫁ぐことなど許せなかったのだろう。だから、ジャスティンと恋人関係にある平民のオリアナをあてたのかもしれない。まあ人の心の中身は本人に正直に話してもらう以外に知る方法はないが。


ここまでの内容だけでも、サブリナはジャスティンに嵌められたと考えていいだろう。そして、サブリナがぽつりぽつりとしてくれた話から伯爵夫人やクリスタルがジャスティンの言う『大切なサブリナの為』という言葉に便乗して利用し続けた。しかも、メイド達がサブリナに関する噂話などをしていたら本来注意すべきメイド長がその役割を全うしていなかったことが窺える。それは子爵家出身のサブリナを快く迎えていなかったことの表れだろう。

サブリナが妊娠しなかったのは、オリアナが侍女という立場を利用しお茶に何か入れていた可能性がある。もしくはジャスティンの妻という立場を妬み必要以上にきつくコルセットを締め上げていたのかもしれないが。


あの夢の内容を知る薫には、ジャスティンがオリアナに与えた恋人という称号がサブリナに対し何をしてもいいという権利でもあったように思える。

そう、オリアナは恋人。


そして、報告書の途中に出てきた恋心を抱く相手ではない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ