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オリハルコンの女~ここから先はわたしが引き受けます、出来る限りではありますが~  作者: 五十嵐 あお


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創造主の作成した世界を実現させる為とはいえ、随分シシリアはその恩恵を受けていたようだ。しかし世の中プラスとマイナスはどこかでバランスを取るようになっていたのだろう。シシリアが恵まれた分、スカーレットは貧乏くじを引き続けた。


そのスカーレットの中でのマイナスに対しプラスだったのがキャストール侯爵。更にはイービルが加わったということだ。

イービルのお陰でスカーレットは最後の最後まで気持ちを持ち続けていられたのだろう。今はこの世界から消えてしまったが。

それでも素敵な恋愛をし、大切な人(?) と共にある幸せを手にした。薫がここにいるのもそのおこぼれ。理由は覚えていないけど、元の世界で薫は死んだのだから。


振り返れば詰まらないことだらけだった薫の人生。住む世界は変わってしまったが、薫もまたマイナスとプラスのバランスを手にする為、これからを大切に過ごさなくては。


しかし創造主の手から離れた途端、アルフレッドやシシリアがこんなことになってしまうとは。シシリアの還俗なしの修道院行きは今まで受けていた恩恵とのバランスと考えられなくもないが、こればかりは何とも言えないと薫は思った。本来指導すべき立場の大人までもが、加担してしまっていたのだ。



キャストール侯爵が名誉学院長に就任した理由は、前学院長の解雇。それもただの解雇ではない。前世で言う懲戒解雇だ。その上強制労働を言い渡された。貴族学院の数人の教師と共に。

強制労働を言い渡された者達は皆、元々は貴族の次男以降。肉体労働は難しいと労働場所は地方の教会の小間使いや検問所等の雑用。給料は出ることなく、働いた分は吸い上げられる一生が平民としてこれから続く。そこでサボるようなことがあれば、肉体労働を課せられることまで決まっているらしい。

真面目に働く、それすら出来なければ彼等では数日で音を上げる場所で命を削るしかないということだ。鞭を持つ監視人の下で。


王宮では今回のことを重く見て、試験の採点後抜き打ちで文官がチェックすることも決めた。学院内と文官、双方において不正が見つかれば直ちに罪に問われ、場合によっては彼等の家にも塁が及ぶことまで既に通知されたというから驚きだ。


しかも、これらのことを決めリードしたのはアルフレッド。大切なシシリアを優遇してくれた者達、アルフレッドという存在があるからそのようにした者達への処分をだ。


「殿下も難しい判断をされたのね」

「はい。ですが、ここで彼等を厳しく罰さなくて、周囲は癒着を疑うでしょう」

「それもそうね」

「元カトエーリテ子爵令嬢の貴族学院在学中の成績が再度調べられ、その際教師達の発言からスカーレットお嬢様の成績も調べられた次第です」

「ふふ、わたしはキャロルよ。過去は振り返らない為にもその名前は伏せてちょうだい。そしてあの方も既に元が付くことになってしまったのね」

「彼女だけではありません。カトエーリテ子爵は爵位を返上いたしました。娘が修道院へ送られる理由を知り、事の重大さから直ぐに決めたようです」

「あの方の養女先が決まらなかったということは、子爵が違約金を?」

「邸など色々処分して支払いに充てたようです。それでも足りない分は、気の長い話になりますが強制労働の者達の給金が当てられます。元カトエーリテ子爵令嬢の成績を改ざんし、現状を招いた責任の一旦を担わせたということです」


学院長達は働いた分が一生吸い上げられると説明されたが、その理由が違約金だったとは。

薫が違約金を定めた理由は、おかしな婚約破棄が起こることを防ぐ為。まさか、こんなことに繋がるとは思ってもみなかった。


話の内容が重すぎたせいだろうか、薫はケビンとノーマンが成績に関することだけしか話していないと気付けなかった。しかしそれは当然のこと。アルフレッドが参加した重要会議が五日間に渡って開かれていたなどと、薫には知る由もなかったのだから。


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