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オリハルコンの女~ここから先はわたしが引き受けます、出来る限りではありますが~  作者: 五十嵐 あお


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王都キャリントン侯爵家12

侯爵家が一、伯爵家が三、子爵家が一、合わせて五家。これが隣国からキャリントン侯爵の招いた貴族家の数だ。テレンスにはこの五家の領地を通り、その先の国へ抜けるよう指示した。仮令、時間をロスしようと。そしてテレンスが通過した領を持つ貴族家はそのサインを見逃さなかった。招いた家々は、どこも当主や当主代理をキャリントン侯爵の晩餐会に参加させると告げてきたのだ。


それを基に作成された隣国からやってくる招待客リスト。こちらも既に王宮に届け出た。後は絶対に発行される滞在許可証を待てば良い。しかも今回は個別に事前送付は不要。国境検問所に許可証を預けておくだけで、招待客は皆問題なく入国と滞在が許可される。王家からのテレンスへの仮の慰労金というところだろう。


キャリントン侯爵は国王も面白いことを考えたものだと思った。政略結婚を自ら台無しにしたアルフレッドに政略結婚を整えさせるとは。しかも、使った駒が共にその失敗で痛い目をみている側近。その駒が自分の息子でなかったらもっと楽しめただろうに。


長子ではないテレンス。だから大切に育てなかったかと聞かれれば、侯爵は間髪入れずに『そんなことはない』と答えられる。侯爵家に生まれスペアの意味を幼いながらに良く理解していたテレンス。年上の兄に劣らないよう努力し続け、弱音を吐くことのなかった大切な息子だ。その努力を別の道で生かしてあげられるよう、アルフレッドの側近候補として王宮に上がらせたのは侯爵なりの愛情だった。侯爵家を継げない代わりに、高い地位につけるようにと。

テレンスを信じていたのだ、絶対に側近の座を得るだろうと。


けれど婿の座は怪しい。こればかりは努力でどうにかなるものではない。アルフレッドがそうだったように、男女の間の『好き』とか『愛』は計り知れないものなのだ。熱病のように魘されれば、覚めた時に体に痛みを覚える。そもそも病気には罹りたくないと、同じ空間に立ち入られなければそれまでだ。


テレンスの婚姻は、アルフレッドがスカーレットを妃として迎えた後、その時の状況で相手を決める予定だった。他国との結び付きや内政などを考慮し、国にとって最善の相手との婚姻を。アルフレッドが婚約破棄をしていなければ、間違いなくテレンスは政治的駒として決められた相手と政略結婚をしていたことだろう。

今回もテレンスが政治的駒という点に違いはない。しかし、状況は大きく異なる。現時点で政略結婚をさせたいテレンスの相手の意思は計り知れない。今のテレンスは交流のないところまで飛ばされる駒。国から飛ばされる時だけは盛大だったが、その後は自力で臨むしかない。


だからこそ侯爵は一度だけテレンスに問うた。『本当にそれでいいのか?』と。それに対しテレンスは真っ直ぐな目で承知していると返してきた。失敗すれば全てを失うと伝えても変わることが無かった意思。あの目には決意が籠っていたのだ。親として何を甘ったれたことを言っているのだと叱り付けることを言ってくれる方が良かったというのに。


プレッシャーを掛けるつもりなど毛頭なかった。ただ、再びいい笑顔のテレンスに会いたいから侯爵は伝えた『めでたい報告の手紙を待つ』と。しかし立場上、親としての顔でずっと待つわけにはいかない。キャリントン侯爵としてテレンス・キャリントンからの吉報を貰った後の準備を進めておかなくては。

ご訪問ありがとうございます。無駄に長い話ですが、宜しくお願い致します。しかも、色々分岐がありまして…。番号間違えとか人物の名前間違えを仕出かしていそうで…心配ですが、個人的目標の『継続』を目指したいと思います。

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