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オリハルコンの女~ここから先はわたしが引き受けます、出来る限りではありますが~  作者: 五十嵐 あお


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サブリナの様子から、薫は二日目の夕食も初日同様胃に優しいメニューを部屋で食べてもらうことにした。またツェルカにもサブリナと多くの時間を共に過ごしてもらうことで、様子をしっかり見てもらうよう頼んだのだった。


しかし、食堂のメニューはこの日もガッツリ系。男性が多いうえに、しっかりした体の持ち主ばかりなのでどうしてもこうなってしまいがちなのだ。そして、この日のメニューは酢豚擬き。

豚肉には疲労回復効果が高いビタミンB群が多く含まれているので、騎士もいる食卓にうってつけの食材だろう。しかもタマネギに含まれるアリシンはビタミンB1の吸収を高めるし、トマトやピーマンに入っているクエン酸も豚肉と一緒に取ると良いと聞いたことがある。それらを踏まえ、薫は酢豚擬きを作ることに決めたのだ。


問題はやっぱり醤油がないこと。ないものはどうしようもない。今回もまたバルサミコ酢でなんとなく代用して薫は酢豚擬き調味料を作ることにしたのだった。豚肉は揚げるが、あとの野菜は火の通りがよいタマネギ、ピーマン、シイタケ、ナスを選び、ニンジンは断念した。シイタケとナスを多めに使いかさ増しも忘れない。本音を言えば、主食にご飯が食べたいのだけれど、こちらは種というか米粒を出したところで田植えまで辿り着くには長い年月が掛かってしまう。既に食べている国を探す方が早いかもしれない。


「どうかな、ノーマン?」

「はい、初めて食べる料理ですが、旨いです」

「良かった。本格的にキッチンの改装が始まったらなかなか作れそうにないものを今のうちに試したくて」

「そうでした…、残念です。俺、キャロルの料理大好きなんで」


前回のエッグブレッドに関する話し合いを持ってから、ノーマンは積極的に料理作りに参加するようになった。今までも食材運びや下ごしらえを手伝うことはあったのだが、最近ではナーサと並び調理人の一人だ。因みにスコットはスイーツ男子だったようで、お菓子作りに精を出してくれている。


サブリナにも一日でも早く部屋から出てきて、この雰囲気を味わってもらいたいと薫は思った。


「そうだ、二人は王都で今時分に開催されるバザーで思いつくものはある?」

「そうですね、社交シーズンに合わせて王都のタウンハウスで多くの貴族が過ごしますから、慈善活動の一環として様々なバザーが開催されていると思いますよ」

「そうよね、色々あるわよね…」

「キャロルも覚えていませんか、毎年王家管轄の修道院用にハンカチに刺繍をしたのを」


ナーサの言葉に、クリスタルが奉仕活動に向かったのはその修道院ではないかと薫は思った。王都内にあり、王家管轄ということで貴族家としても令嬢を送りやすい場所だ。

サブリナには申し訳ないが、明日はもう少し踏み込んだ質問をしてみようと薫は思ったのだった。

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