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オリハルコンの女~ここから先はわたしが引き受けます、出来る限りではありますが~  作者: 五十嵐 あお


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王宮では4

十年という長い月日がいけなかったのか。

当たり前だと思っていたことが、実は当たり前ではないとアルフレッド達三人は突き付けられたのだった。


最初に出席したのは国防に関する会議。取り分け北部の国境警備に関して。


「今後の国境警備は国へ移管されます。勿論国境管理も。それに伴う予算見直しが必要になりますが、兵士や職員の宿舎なども念頭に置かなければなりません」

「言って直ぐになんとかなる問題ではない。ここはキャストール侯爵に頼み、しばらくは委託し、その対価を支払わなくては」

「そもそも、行って直ぐに兵士も職員も仕事が出来る筈がないだろう。巡回経路や隣国との様々な絡みを教えてもらわなければ」


そう、スカーレットがアルフレッドの婚約者になってからは北部の国境管理に纏わることは全てキャストール侯爵家が担っていたのだ。それに対して王家はキャストール侯爵家へ何をしたか。本来キャストール侯爵家が得る通行税の割合を一割上げて六割にしただけだった。

たった一割では国境管理など賄える筈がない。しかし、スカーレットが王妃として大切にされる為にもキャストール侯爵は全てを引き受けたのだった。


様々な内容に、アルフレッドは今更ながらスカーレットとキャストール侯爵家の重要性を認識した。どうして貴族学院の数年間、誰もこのことをアルフレッドに伝えてくれなかったのか。

否、居た。最初の頃はまだスカーレットから伝えられていた、この婚約は王家と侯爵家との重要な取り決めだと。アルフレッドとスカーレットの不仲が噂されれば良いことは一つもないとも。それに対しアルフレッドがけんもほろろな対応をしたのだ。シシリアを妬み、己の家の力を振りかざす性悪女と。


冷静になれば、スカーレットが侯爵家の力を振りかざしたことなどなかった。その証拠にこの会議でアルフレッドはキャストール侯爵家の力を思い知ったばかりだ。スカーレットはただ婚約が両家にとって重要だとしか言ってない。それは、気遣いだったのだろう。防衛力や資金力のことを言わなかったのは。


けれど、その気遣いこそ不要だった。今更言っても遅いとは分かっているが。どうせなら何の為の婚約かアルフレッドに伝え、目を覚まさせて欲しかったくらいだ。


違う、スカーレットは事あるごとにアルフレッドの目を覚まさせようとしてくれていた。恋という幻影にアルフレッドが現実から目を背けた結果が今なのだ。


周囲を見れば、シシリアの養女先候補の家々は全てこの会議に出席している。アルフレッドは彼らが本当にシシリアを養女として迎えようとしていたのか疑問に思わざるをえなかった。



昼食を挟み、午後もまた国防に関する会議が続く。

アルフレッド達三人は、通常業務もこなさなくてはいけない。その為、昼食はサンドイッチにし食事をしながら書類仕事をしたのだった。


そしてそれはある意味非常に助かった。書類仕事が進んだから、ではなく三人で話さなくても良かったので。


会議は今後のこと、未来を話し合うものだが、理由は過去のアルフレッドに起因する。口を開けば、やり直せない過去への後悔が飛び出してしまいそうだったのだ。きっと、側近達への恨み言に繋がってしまったかもしれない。

だから、話す暇などなくて正解だった。

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