王都オランデール伯爵家10
娘が嫁した家、それも爵位が上の伯爵家からの依頼に夫人は心して臨んだようだった。それも、出来るだけ早く。
どこの派閥にも属していないリッジウェイ子爵だが、夫人が話していたように前子爵とキャストール侯爵は本当に古くからの付き合いのようだ。伯爵家を訪ねた数日後には、夫妻揃ってキャストール侯爵家へ出向き、全てを整えてしまったのだから。
あと数日。そうすれば侯爵家から迎えの者がオランデール伯爵邸へやって来て、そのままサブリナをファルコールへ送り届けてくれるという。
当初の予定では侍女、馬車、途中の宿等の手配は全て子爵家が行い、伯爵家はただサブリナを送り出せばいいだけだった。前リッジウェイ子爵夫人の礼状からも窺えるように、伯爵家の寛大な心に感謝し、ことを進めた結果だ。
しかし伯爵夫人とジャスティンは、伯爵家からも侍女を一人くらいは付けた方が良いと主張した。二人が言うように、子爵家の侍女よりは伯爵家の侍女の方が礼儀も含め格が上。侯爵令嬢のいる場所へ向かうのだから、付けた方が相手にも失礼がないという言葉に伯爵も頷いたのだった。
ファルコールまでの距離を考えれば、子爵家もそれなりの馬車を用意するはず。だったら、当日侍女を一人付けたところで問題ないという最終結論に至ったのだった。夫人の礼状が届いたその日は。
ところが、夫人からの礼状到着の翌日、馬車は侯爵家が用意することになったとの連絡がやって来た。伯爵家からサブリナを預かるのだからと、護衛を含め手配するという手紙が侯爵家から届いたのだ。
馬車と護衛が侯爵家で手配されるならば、当日急に侍女を伯爵家から付けることは出来ない。事前連絡もなしにそんなことをすれば失礼に当たってしまうだろう。仮令事前に連絡したとしても、それはそれで侯爵家の手配にケチを付けていると思われてしまう可能性もある。
伯爵としては侍女のことより、侯爵家の紋章が入った馬車が伯爵邸にやって来ることの方が重要だ。そこで大なり小なり揉め事が起きるよりは、すんなり事が運ぶ方が良い。だから、夫人とジャスティンからの主張は翌日には却下されたのだった。
サブリナが日々の学習を怠らないようお目付け役を兼ねた侍女が却下されると、夫人とジャスティンはせめて残りの数日だけでもといつも以上に教育に力を注いだ。既に六年という歳月を掛けても進まない教育だというのに、数日詰め込んだところで何になるのか。伯爵には時間の無駄にしか思えないが、二人はそれぞれ大切なサブリナの為だと言う。
長い移動が始まる前日は流石に控えるかと思ったサブリナへの教育。しかし、それは前日もしっかり行われたのだった。
誤字脱字、いつもありがとうございます。バイトシフトに負けず、一日一話以上を目標にしているので、うっかりどこではなくがっつりしでかしていますが…、本当に感謝しております。そして気付けば200話を越えていました。お付き合いありがとうございます。




