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オリハルコンの女~ここから先はわたしが引き受けます、出来る限りではありますが~  作者: 五十嵐 あお


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王宮では25

「それで本当の理由は?」

人払いがされた執務室にアルフレッドの低い声が響いた。ダニエルが伝えた側近を断る理由にアルフレッドが納得していないということだ。


「申し上げましたように、わたしはまだ学生。既に実務をこなしていらっしゃる殿下の役に立つには力不足です」

「伝えたはずだ、おまえはスカーレットの弟である時点で、俺にとって最高の持ち駒になると」

「はい、ですが、同時に最悪の持ち駒にもなる可能性があります。考えたのです、わたしが学生であろうと、理由にさえなればいい人物はいくらでもいるだろうと」

「学生であるうちは、俺が守る」

「殿下、危険な賭けは止めましょう。最初に申し上げた理由で足りなければ、これも加えましょう、保身の為です。己の失態で姉に面倒を見てもらいたくはありません」

「何故スカーレットを守ると断言しない」

「必要ないからです。姉はわたしに対し助けは求めません。見た目からは想像もつかないほど、強い人間ですから。わたしにも具体的に分かりませんが、姉は殿下が心配していることへ自分自身で何か策を講じているように思うのです」

「そうか。確かにそうかもしれないな、スカーレットならば先を読んでいるだろう」


アルフレッドはそれ以上ダニエルに側近を断る理由を尋ねることはなかった。ダニエルが言ったスカーレット自身が策を講じているという部分に納得したということだ。


「知っていたら教えて欲しい。キャストール侯爵が陛下と話し合った後、貴族院で制定させた、婚約破棄を言い出した側が再度婚約を結び直したい時は違約金の三倍を支払うというのは誰が考えたのだ?」

「わたしも詳しくは聞き及んでおりませんが、骨子は姉かと思われます」

「いつ頃から考え出したのだろうか…」


アルフレッドがダニエルの回答の後に独り言のように呟いた。語尾が辛うじて聞き取れる程度の呟き。それはまるでアルフレッドが過去のアルフレッドに質問しているようだった。答えを知っているのはスカーレットに他ならないというのに。


最初から全てを見聞きしていないダニエルには分からない。何が原因で、どうしてこうなってしまったのか。滑稽なのは、今なら分からないと認めておきながら、当時はどうして一方へ加担したのかだ。

そしてアルフレッドの声のトーン、表情から分かってしまったことがある。アルフレッドはスカーレットがいつから考え出したのかなど聞いていない。どの時点で諦めたのか知りたいと思っているのだ。アルフレッドが婚約破棄という裏切りを言い出すと予測したのか。


そしてそれはダニエルも知りたいことだった。貴族学院を卒業してからスカーレットが邸に滞在していた期間は必要最低限。スカーレットの存在を煙たがっているダニエルに配慮したものだろう。その短い日数すら無駄にしたダニエルが言えたことではないが、いつから別れの日数は最低限で良いと思ってしまったのだろうか。否、思わせてしまったのだろうか。

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