表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オリハルコンの女~ここから先はわたしが引き受けます、出来る限りではありますが~  作者: 五十嵐 あお


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

195/673

隣国パートリッジ公爵家2

二重国籍取得はスカーレットだけではなく、キャストール侯爵も対象というのがパートリッジ公爵の要求だった。しかも、ジョイスが自国へ戻り言うべき台詞まで作られていた。


「力ある者が簡単に姪を窮地に追い込むような国だ、次は窮地どころではなく墓場に埋められては敵わない。万が一の時に直ぐにこちらにやって来て、その後帰国命令を出されるようなことを避ける為の手段だと思って欲しい、とわたしが主張していたとでも伝えてくれ」

「ですが、キャストール侯爵は」

「侯爵は亡くなったわたしの妹を政略結婚にもかかわらず心から愛してくれた。その妹によく似た姪に会えなくなるようなことがあってはならない。万が一の時のこれも保険だ、とでも伝えればいい。何よりそんなことが起きた時にはか弱い令嬢一人ではこの国まで来れまいて」

「畏まりました」

「で、このことの本当の意味には気付いているのか?侯爵も取得した方が良いと言ったのはスカーレットだ」

「今後に備えるということではないでしょうか」

「そうだな、時間が経つにつれ、スカーレットを守るのが難しくならないよう備えたいのだろう。それに侯爵にとっても王家への良いカードになる。いつでも距離を取れると示す為の。ここまで聞いても、君は本当にこのことを実現出来るのか?」


ジョイスは公爵の瞳から挑発を感じた。二重国籍に関し、国へ伝える理由以外の別の意味をわざわざ話したのはジョイスを煽る為だ。今度は本当にスカーレットを守るのかと問うているのだ。今はまだアルフレッドの犬のジョイスに。


「わたしの役目は両国を以前のような関係に近付ける下準備をすることです。閣下達から我が国へ使節団を送ってもらうためにもそのご要望は通します。そもそも我々が不興を買ってしまったのは、閣下の大切な姪御様に無礼を働いたから、先ずはそこから償わなければ」

「そうか、そういう流れにするのだな。では、この我が国民のファルコールでの長期滞在及び労働許可はどう進めるのだ?」

「はい、既におられるケレット辺境伯領の騎士の皆様が管理するという条件を付ければなんとかなると。勿論ファルコールの国境検問所にて滞在者の名簿は更新しますが。こちらは原案にいくつか条件を加えさせて下さい」


パートリッジ公爵がファルコールで自国民達が滞在し易くしたかった理由はケレット辺境伯からの手紙だった。ドミニクがスカーレットから聞いてきた温泉施設や医療補助係養成施設に興味を持ったのだ。特にスカーレットが考えるように、女性達が高度な技術の仕事を身に着けるのは良いことだと公爵も考えていた。

このまま悪戯に隣国との関係を放置しておいても良いことはない。そろそろ落としどころを見つけなくてはと思っていたところに、ケレット辺境伯から丁度良い情報が届いたのだ。とは言っても、今回のこの要求はジョイスの言葉通り下準備に過ぎないが。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ