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オリハルコンの女~ここから先はわたしが引き受けます、出来る限りではありますが~  作者: 五十嵐 あお


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王都オランデール伯爵家6

オランデール伯爵家は数年前からファルコールとは反対側の隣国にある侯爵家と取引を開始した。その取引が上手く行っているようで、前リッジウェイ子爵夫人が案内されたサロンには素晴らしい置物と絵画が飾られていた。

そして向かい合うサブリナが纏うドレスも素晴らしい。成る程、サブリナが言うようにとても大切にされているということだろう。但しそれはドレスや使用するサロンという付随することで考えたのならば、だ。


夫人にはどうしてもサブリナの表情が娘の頃とはかけ離れ過ぎているように思える。結婚をして、六年。その婚姻期間がサブリナを少女から大人の女性へ変えてくれたのだとしても、何かが引っ掛かって仕方が無いのだ。

伯爵家の侍女が化粧によりサブリナを大人の女性として美しくあるように頑張ってくれているという見方も出来る。しかし夫人からしてみると、その化粧はサブリナの好みでもなさそうだし、らしさも感じられないのだ。


パーラーメイドが淹れてくれた紅茶は香りが高く、注がれたティーカップはとても美しい。用意された茶菓子も王都で流行りの店のもの。何もかもがサブリナの血縁者である夫人を最大限にもてなそうとしていると分かる。

それでも、何かが夫人には腑に落ちない。

いつも掴めなかった『何か』の正体。子供が出来ないことであれば、どうしようもない。でもそれ以外にも何かあるならば、少しでも力になりたいと思うのが夫人の母親としての本音だ。けれど、いくら親子とはいえ、爵位が上の伯爵家へ嫁に出した娘に困ったことがあるならば打ち明けて欲しいとは言い辛い。ややもすれば、伯爵家への不満と取られサブリナの立場を悪くすることにも繋がりかねないのだ。


スカーレットがサブリナを話し相手としてファルコールへ招くという提案。表向きはそうだが、事実は真逆。夫人が受けたサブリナの質問に対する答えや表情から、聡いスカーレットは察したのだろう夫人の胸の内にある不安を。

環境の良いファルコールで童心に帰るかのようにスカーレットと話すことで、サブリナが抱えている『何か』が分かれば夫人にとってそれ以上にありがたいことはない。仮令それが誰にもどうしようも出来ないことであっても。その時は本当に気分転換に自然と触れ合い、あの温泉という温かい湯にゆっくりつかればいいのだ。


その為にも、この機会を無駄にするわけにはいかない。折角代替わりして社交の化かし合いとは無縁になったというのに、夫人は自分の娘相手に一芝居を始めたのだった。


「サブリナ、こんなに素敵なお邸で過ごしているところを申し訳ないのだけれど…。お父様の古くからの友人、キャストール侯爵の為に力になってはくれないかしら。実は、わたし達、一週間程ファルコールに滞在していたのだけれど、その時キャストール侯爵令嬢のお見舞いに行ったのよ」


夫人はことの経緯をサブリナに説明する体を装いながら、壁に控えるパーラーメイドと侍女にも良く分かるように話した。特にキャストール侯爵と前リッジウェイ子爵が友人であることを強調しながら。しかも、嫁に出したサブリナに夫妻がお願いするのは本来あまり良くないことも理解しているが、あまりにもスカーレットが懐かしそうにしていたもので迷惑と知りながらやって来てしまったと。


一通り話し終えたところで、パーラーメイドが新たな紅茶を用意するとサロンを後にした。

夫人は理解した、いよいよお出ましだと。

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