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オリハルコンの女~ここから先はわたしが引き受けます、出来る限りではありますが~  作者: 五十嵐 あお


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王都キャストール侯爵家15

「クライド、スカーレット嬢はほんの少しの表情も見逃さないし、自身が持つ情報から様々なことを考えられるようだ」

「まだ十八なのに、随分と腹の内や先々を読むようになってしまったのは親としては喜んでいいのか微妙だよ。あの子はそうならなければいけなかったからな。サブリナ夫人のことは、スカーレットの読みが外れればそれに越したことはない。どの道ちょっとした気分転換は必要だろうから、ファルコールでの滞在は良いものになるだろう」


侯爵にはスカーレットがどうしてサブリナの現状を危惧したのか、分かりたくないというのに分かってしまった。悪意に満ちた中で過ごしてきたスカーレットの思考はそちらに傾きやすいということだ。サブリナが様々な思惑の中、雁字搦めになっていないか心配したのだ。嘗てのスカーレットもまた王子の婚約者という肩書、それが故の周囲の目により身の振り方に制限を受けていた。


スカーレットの言動には何かにつけて、『殿下の婚約者なのに』、『侯爵家を笠に着て』等と批判的な言葉を陰で囁かれていたということは調査済み。時には陰ではなく堂々とこれみよがしに、態と主語を言わないように言葉を投げつけていた者がいたことも分かっている。しかも、『話し相手』探しのお陰で裏も取れてしまった。


子爵家から伯爵家の次期当主となる者に嫁したサブリナにも、制限があって当然だとスカーレットは考えたのだろう。しかも次期当主との間に子が出来ないサブリナには見えない圧力が日に日に強くなったはずだ。それに侯爵が最近釣りあげた中でも一番大きな魚が居た家、スカーレットが様々な予想を立てるのは必然の結果。



「妻の表情から、サブリナのことを心配していると気付くとは、本当になんと感謝していいやら。妻もたまに見かけるサブリナの表情が気になって仕方なかったようで。まあ、何かしら心に引っ掛かっていることはあるのだろう、サブリナには」

「母親というのはそういうものなのだろう。わたしが再婚でもしていれば、スカーレットの状況もまた違ったのかもしれないが」

「クライドは亡き奥方の分まで愛情を注いでいたさ。それにあんなことがあったスカーレット嬢が他者を気に掛けられるのは、二人の育て方が良かったということだ。何せ、リプセット公爵家の三男を助けたどころではなく、その従者のハーヴァンに至っては暫く傍に滞在させていたのだから。しかも、我々に王都まで送っていって欲しいとは。病み上がりで万が一のことまで考えてそうしたのだろう」


前リッジウェイ子爵は公爵邸でのようにまたもやスカーレットがどこまで読んでいたのか深く考えずにはいられなかった。駆け引きだけではなく、芯の部分では他者の体調や状況までも気に掛けているのではないかと。

スカーレットがジョイスとその従者ハーヴァンを助けたことで、キャストール侯爵とリプセット公爵は以前のように友人として、多少の蟠りはあれど遣り取りすることは可能になるだろう。

『物の序で』での副産物はこの日も薫の株を押し上げてくれていた。


こうして、前リッジウェイ子爵は王都に戻った二日後にお礼も兼ねてキャストール侯爵邸を訪ねたのだった。勿論、侯爵にとって最大の土産となるファルコールでのスカーレットの様子話を沢山持って。

この同日、夫人はオランデール伯爵家を訪問していた。リプセット公爵が言ったように、訪問伺いの返信が驚く程早くやって来たので。

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