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誤字脱字、本当にありがとうございます。今月は月末もなんとか投稿し続けようと意気込んでおりまして…、なんだかおかしな誤字脱字をしでかしております。(←言い訳です)
誤字脱字のお知らせ、本当に感謝しております。
親方は直ぐにファルコールの館にやって来てくれた。それはそうだろう、前払いの手付金も作業完了後の支払いもしっかりしている上客だ。更に、親方には別途作業報酬だけでなく、施工管理費用まで払ってくれる。後ろに控えている目の鋭い二人のお兄さんから睨まれるようなことをしなければ、打ち合わせ内容も面白い。
「部屋数を減らす…」
「減築…とでも言うのかしら?」
しかも今回の依頼は親方にとっても初めてのことだった。最初は戸惑う親方に、先ずは建物の構造がどうなっているのか調査をし、どこか隣り合う部屋同士を一つに出来ないかというもの。
「例えば壁を半分残して、両隣の部屋への行き来を楽に出来るようにするとかでもいいの。それを最低でも三部屋作れないかしら。特に小さめの部屋が多いエリアで」
薫が使用している部屋は広いが、ファルコールの館内の使用人用に作られた部屋は少々狭めだ。その使用人用の部屋が並ぶエリアでこの改築が出来れば、そこ自体が妻帯者用エリアになる。薫としては今後を見据え、エリア分けも視野に入れ工事を発注したいと思っていたのだった。
「どうかしら?」
「やってみやしょう。いざという時は、うち扉で繋ぐか、窓枠のようなもので対応出来るだろうし」
「ありがとう、親方。それと、他にも発注したい工事があるの」
工事だけではない。薫は親方経由で前回同様新たなカーテン等も購入してもらいたいとお願いした。サイズ等が分かっている人が間に入っていれば話が早いし、親方は今後もここの仕事を続けたいだろうから希望にそうものを頑張って探してくれるはずだ。
今回薫が発注した大きな工事は、二部屋を一部屋へすること、騎士の宿舎で使用されていない部屋二つを少しだけ豪華にすること、指定の場所にファルコールのいくつかのエリアの土を運び入れた畑を用意すること、そして大きめな鶏舎を作ることとなった。
「カーテンや壁紙の原材料費は親方が購入したら直ぐにこちらで支払うわ。工事終了まで立替の必要はないから安心してね」
目の前にいる若くて美しい工事発注者は、本当に細かいことにまで気を回してくれると親方は思った。今回も親方にわざわざ菓子と茶まで振る舞ってくれている。
「最高の仕事が出来る職人達を集めます」
「ふふ、そうしてくれると思っているから親方を呼んだのよ」
後ろに控えていたケビンとノーマンはこうやってスカーレットにどんどん人が手懐けられ、集まっていってしまうのだとこの日も思わざるを得なかった。
騎士宿舎の二部屋だって別にしなくても良い工事だ。しかし、それではデズモンド達に悪いだろうとスカーレットが言い、わざわざ少し豪華にすることになってしまった。それ以外にも貴族の二人のことを考え荷物と衣装専用部屋まで用意するという。
こういう配慮を重ねることで、更にあの二人がスカーレットに好感を抱くことが目に見えている。それを思うとケビンとノーマンの目つきは更に鋭いものに。
発注される内容に喜ぶ親方は、どうしても視界に入るその鋭い目つきに本当に優秀な職人を集めなくてはと肝に銘じたのだった。




