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オリハルコンの女~ここから先はわたしが引き受けます、出来る限りではありますが~  作者: 五十嵐 あお


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国内某所とある修道院4

また一月が過ぎて行ったとシシリアは思った。何度朝と夜が繰り返されたのだろうか。

ここにやって来た当初は明るさと暗さで時間の経過を感じたが、今はそんなことはない。一日、三日、一週間、一月、数えても数えなくても時間は淡々と過ぎて行く。


そんな毎日の中でシシリアは気が付いた。与えられた作業に集中していると意外と早く時間が過ぎて行くことに。手を止め誰かに質問する必要が無くなった分、集中できるようになったのだ。

しかし無駄に長いと感じる夕食後の時間はどうにも出来なかった。時間がいくら過ぎても、楽しかった日々を頭から消し去ることが出来ずにいたのだ。



その日は朝の祈りの時間が終わると、修道院長から新たな修道女が来るという知らせがあった。

「明日は新たな修道女が二人やって来ます。二人はまだ十三歳、ですのでここでの生活に戸惑うでしょうが、温かい目で見守ってあげて下さい」


十三歳でこの規律の厳しい修道院へやって来るとは一体どういう素性の者なのだろうか。多くの修道女が心の中で同じことを思っただろう。しかし、ここは受け入れる場所。院長の言うように温かい目で見守ればいい。

シシリアもここに到着した後にどんなに目を腫らした朝があっても、誰も何も言わなかった。あの時は誰も気に留めてくれないのだと思ったが、今ならば見て見ない振りをしていたのだと分かる。

『そんなに泣いてどうしたの?』、『そんなに悲しいことがあったの?』と言われたところで、過去は変わらないし、朝から泣きたくなっただけだっただろう。


翌日到着した二人は十三歳の割には小さかった。シシリアが後で聞いた話によると、世話役の修道女がその場で修道服の丈を黙々と詰めたそうだ。そして二人はシシリアとは到着した時間が違ったので、その日の夕食から食堂に現れた。

各々名前を名乗り、頭を下げる。その様子からあまり教育を受けていない平民のようだった。


シシリアはそこでまた過去の自分を思い出した。スカーレットから作法に関して何度も口うるさく言われたことを。あの二人はスカーレットの目から見たシシリアだったのかもしれない。シシリアが二人にあまり教育を受けられなかった平民と評したいように、スカーレットにはシシリアの作法がアルフレッドの隣に居るには相応しくないと分かってしまったのだろう。


アルフレッドの品位を落とさない為に、スカーレットはシシリアに何度も言葉を掛けてくれていたのだ。

あの選考会にやって来ていた侯爵家と伯爵家。シシリアの為に素晴らしい家々に声が掛けられたとアルフレッドは言っていた。

その素晴らしいをシシリアはドレスや宝飾品をいくらでも揃えられる『素晴らしい財力』と最初に捉えてしまったが、本当は違う。素晴らしい品格を持つ家だと少しでも理解出来ていたなら…、当然の結果だ、どこの家にも受け入れられなかったのは。

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