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オリハルコンの女~ここから先はわたしが引き受けます、出来る限りではありますが~  作者: 五十嵐 あお


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デズモンドが持つ毒は何に対して、そしてどのようなものなのか。


この短時間で交わした言葉と一切変わらない表情から類推するに、デズモンドはジョイスにスカーレットの幼馴染という権利はないと言っている。それも、その言葉の前に『大切な』を付けるのは烏滸がましいと。そう言い切るならば、どうしてスカーレットが今ここに居るのか教えて欲しいと言っているのだ。


誰をも虜にしそうな表情の下にある毒の正体は怒り、それもジョイス、否、スカーレットをここへ追いやった全てに対してだろう。毒を隠す為に、デズモンドはより一層美しい表情を見せているのだ、崩すことなく。

ジョイスは思った、遠くから何度か見掛けたデズモンドはいつもこんな表情だったのだろうかと。キャリントン侯爵に従えられていた時の表情はどうだったのだろうかと。

美しければ美しい程毒を隠し持っているのならば、デズモンドに咲く花は真っ黒な薔薇だろう。若しくはそれすら隠すように華やかな食虫植物、プリムリフロラ・ローズあたりかもしれない。一見食虫植物には見えない花の。


毒の正体がジョイスの過去への怒りならば、これから話す内容はほぼ決まってくる。既にデズモンドはスカーレットとキャロルを別の人間として扱うとも態々言葉にしてくれている。言い方がジョイスには気に食わないものだとしても。

そう、デズモンドは宣言した、ジョイスの願いは不要だと。即ち、『キャロル』に関わるなということだ。


王都の噂では、デズモンドは様々な花を転々としていたはず。一人の女性に入れ込むようなタイプではない。しかし目の前にいるデズモンドはスカーレットを大切に思ってくれているからこそ、毒を隠しているのだ。それはスカーレットにとって有り難い反面、ジョイスには非常に面倒なことでもある。

ジョイスはデズモンドと本当に長い付き合いになってしまいそうだと腹を括った。



「疲れた。ここからは個人として話したい。子爵も疲れないか?俺にそんな表情は不要だ。序に、ただジョイスと呼んでくれ。そのうち公爵家も出る身だ。知っているだろ、テレンスと同じなんだから、俺は」

「では、このファルコールでだけはそのように致しましょう、ジョイス様」

「敬称もいらない。まあ、今はそんなことよりも、キャロルのことだ。俺と子爵には共通の目的がある、キャロルの自由で楽しい暮らしを何物にも侵害させないという。それは合っているよな、方法は違うにしても」

「そうですね、こうして話をするのが初めての方ですから、どのような方法が好きかも含め知らないことだらけ。ただ、ジョイス様がおっしゃった共通の目的に嘘偽りがなければ、そこは同じですね」

「嘘偽りは微塵もない。子爵が指摘したように大切な幼馴染を傷付けた俺に出来るのは、今度こそ守ることだけだから」

「急に話し方を変えたのは腹を割っていると見せたいからでしょうが、わたしはそれをどこまで信用すればいいのですか?過去は変えられません。あの時あなたが仕えていた人物と今もなお仕える人物が同じならば、どうして方針が変わるのか…」


ジョイスはスカーレットの『その言葉をわたしはどうやって信じればいいのですか?』を再び思い出したのだった。

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