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オリハルコンの女~ここから先はわたしが引き受けます、出来る限りではありますが~  作者: 五十嵐 あお


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そのジョイスもそれなりの年齢になり夢に登場していた。スカーレットの記憶にあるいつも表情を変えないジョイスではなく、ずっと難しい顔をしたままで。

ファルコールに滞在していた時に見せてくれた人間らしい表情など一度も夢の中で浮かべることはなかった。


「メラニーの様子は」

「余命いくばくもないというのが医師の見解です」

「そうか。だったら尚更俺がメラニーの前をうろつかない方がいいだろう」

「しかしそれでは奥様が」

「いいんだ、ハーヴァン。俺達が、否、俺が不幸に追いやってしまったここで眠るあの方の為だけに娶った妻に最後くらい安らぎを与えなくては」


会話の内容から、ジョイスとハーヴァンがいる場面はスカーレットの墓前だと分かった。場面転換と共に別の夢に移行するということもなくスカーレット没後の世界が続いているのだ。


ただ墓場という場所だからなのか、とても寂れた雰囲気に包まれている。その中でジョイスが手向けた美しい花々が生と死をより一層強調していた。


「さて、どうするかな。ナタリアは隣国に到着した頃だろう」

「手助けしたわたしが言うのもおかしな話ですが、本当に良かったのですか?」

「他の男なら見逃す上に手助けしろなんて言わなかった。ただ、相手があの方の息子だから…」

「本当にお好きだったのですね」

「好き?違う、深く愛していた。それを覆い隠す為に嫌いになる努力をした結果がこれだ」


ジョイスの表情が更に険しくなる。普通ならそれは怒りなどのネガティブなものと捉えられるだろう。しかし、薫には分かったしまった。ジョイスは泣いているのだと。


薫がこの世界にやって来た時に、ここは恋愛小説の一部という説明を受けた。イービルのその説明に嘘はないだろう。でも、その世界が終わった後から動き出す世界が引き続き恋愛小説のままという保証はない。様々な修正が始まるのは当然のことだ。ジョイスが言ったように、隣国との関係を修復する必要もあっただろう。


ジョイスとメラニーの間に生まれたナタリア。そしてスカーレットとデズモンドの間に生まれたベンジャミン。ジョイスはどうやら態とナタリアとベンジャミンを隣国へ逃がした節がある。登場人物達を中心に見ている夢なだけに、ト書きのような場面説明がないのが薫にはもどかしい。もっと言ってしまうと、前回と今回の夢の間にある年月が抜けてしまっていることも。


薫が見る夢なのに、どうして都合良く見ることが出来ないのだろうか。何より、どうしてまたこんな夢を見たのか。

スカーレットが小説通りに行動しなかったことで、未来は変わった。そしてその変わった未来を少しでも良いものにする為に薫がいる。

薫が見たのは恐らく小説通りに進んでいたらこの世界が進んだであろう未来。前回は原作なのではと考えもしたが、あの婚約破棄までの流れと夢は世界観が違い過ぎる。同じ作者が先の章、若しくは続編として書くだろうか。

そして前回の夢を見た直後は本来の未来を紐解く切っ掛けがデズモンドと考えたが、それは違っていた。初めて正式に顔合わせをした日は夢など見なかったのだから。でも、何かが理由であることは間違いないと薫は思ったのだった。

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