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「食事前にとても良いコースを案内してもらえたよ」
今日も午前中から妖艶な雰囲気を醸し出していたデズモンドがハーヴァンに連れられ戻って来た。従者のリアムもそれなりに整った顔立ちなのに、デズモンドのお陰で普通に見えるのが薫にはとても不思議に思える。
しかしこれが二人の作戦なのかもしれない。リアムを人畜無害に見せる為の。ハーヴァンから聞いてしまった裏情報によると、リアムも王都では侍女泣かせだったとか。デズモンドのおこぼれを頂戴しているリアムは差し詰めハイエナといったところだろうか。ちょっとたれ目で人懐こそうな顔が、ハイエナに似ている気もする。
でも、気を付けなければ。ハイエナはおこぼれを頂く肉食動物に思われているが、実は狩りも得意な夜行性。あの色気大魔神と共に行動しているのだ、気を付けたにこしたことはない。
それを促す為にハーヴァンは顔を赤くして口籠りながら、あの裏情報をオブラートに包みまくって伝えてくれたのだろう。今の状態では薫の方がハーヴァンより年下だけれど、あまりの初心な様子につい可愛いと思ってしまった。けれど、『侍女泣かせ』なだけに薫に伝えている体を装ってナーサに向け話していたら…。二人に何か進展があった可能性もある。
ファルコールへやって来る時に、薫はナーサの恋を後押しすると決めている。仮令ハーヴァンが王都へ戻る身だとしても、やはり魅力的な職場を提供してここへまた戻って来てもらう方がいい、ナーサの為に。幸いアルフレッドから頂いた違約金は驚く程あるのだから、使いどころへは惜しみなく。これは薫個人のナーサへのプレゼントのようなものなのだから、個人に対する慰謝料から支出するのが筋だろう。
その前に、この色気大魔神ご一行、と言っても二人だけれど、と楽しい昼食をしなければ。
「デズ、わたし達の普段のエリアで申し訳ないけれど、昼食を楽しみましょう」
「ああ、キャロルの普段に入れるなんて、心の壁が存在していないようで嬉しいよ」
どうしてだろう、デズモンドの言葉が気障っぽくかいやらしく聞こえてしまうのは。デズモンドが意図して行っている可能性もあるが、今ではそれが標準になっていることも考えられる。何れにせよこれから付き合っていかなくてはいけない人物なのだから慣れなくては。
「あら、ここに招いているのだもの、信用しているわ。だからお見せしたのだもの、散歩コースも」
「へえ。散歩コースってことは」
「勿論、戻ってくるわ、どこまで行っても。今はね」
「それはありがたい。俺、キャロルとは週に一度は一緒に食事をしたいと思っていたんだ。この間の取引の条件に付け加えてもらいたいことがあるんだけど…」
お願いをする時は甘えた雰囲気を出す、これはもうデズモンドの技なんだなと薫は思った。本当に慣れなくては。
何度か触れてきましたが、アルバイトに励まなくてはいけないもので…次の投稿は年末ぎりぎりかな、と。年内のご挨拶をする為にも、31日に一話でもと思っています。




