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オリハルコンの女~ここから先はわたしが引き受けます、出来る限りではありますが~  作者: 五十嵐 あお


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デズモンドと会った翌日の朝、目覚めた薫は期待が外れたことにほっとした。外れて良かったと。

夢は見なかったのだ。否、もしかしたら見たのかもしれないから、正しくは起きた時には何も覚えていなかったと言うべきなのだろう。


前回ナーサと共にデズモンドを覗き見ただけで、あんなショッキングな夢を見た。だから、二人きりで話し合いをしたその日の夜は、どんな夢を見てしまうのかと少し恐ろしくもあったのだ。


しかし考えてみると前回の夢でスカーレットはこの世を去ってしまった。あれが原作ならば、もう薫には関係がないパートということで夢など見ようがないのかもしれない。


なんて詰まらない原作だろう。悪役令嬢のスカーレットは婚約者の王子から婚約破棄を突き付けられ、その後誰かによって差し向けられたデズモンドに貶められる。夢には出てこなかったが、誰がデズモンドに命令を下したのかは気になるところだが。

そしてスカーレットは妊娠し、デズモンドの子、ベンジャミンを産む。けれど出産した時には既にデズモンドに捨てられた後。スカーレットは本当に愛したデズモンドに裏切られ絶望を味わうのだ。

いくら力あるキャストール侯爵家の娘とはいえ、未婚で子を産んだとあれば社交界へ出ることは絶望的。しかもデズモンドに遊ばれて捨てられたのだ、夢の中では外出すら出来なくなっていた。

不思議なのは、遊ばれて捨てられたことまで貴族社会で知れ渡っていたこと。そこにもまた、デズモンドを差し向けた誰かの明確な意図があったのだろう。

キャリントン侯爵の下にいるデズモンドにそんな命を下せる人物は限られている。更にそんなことをデズモンドが引き受けなくてはならなかった理由は何だろうか。あの昏い表情が意味していたことは。


夢の中のスカーレットは出産後徐々に正気を失っていく。最初は誰もそれに気付かない。ただ、ベンジャミンを見ては微笑んでいるだけにしか見えなかったからだ。それが決定的になるのはベンジャミンが五歳を過ぎた頃から。スカーレットはベンジャミンをデズモンドとしか呼ばなくなってしまうのだ。数年後、スカーレットはベンジャミンの首を絞めようとした瞬間に我に返り、自ら命を絶ってしまった。『ベンジャミン、心から愛しているわ』という走り書きを残して。


薫にはスカーレットの目線でしかこの夢を捉えられない。だから、これが本当に原作ならば読者はスカーレットの最後がこんなで『ざまあみろ』と思えたのだろうが、薫は違う。原作に対して『ざまあみろ』と叫びたい。


その為にも、今日もホテル業に精を出したり新たなことを考えたりと自由で楽しい未来へ向けベッドから降りたのだった。

ご訪問ありがとうございます。気付いたら20万文字を越えていて吃驚しました。そしてこんなのらりくらりの話に100以上のブックマークがあり、また吃驚です。ありがとうございます。

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