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オリハルコンの女~ここから先はわたしが引き受けます、出来る限りではありますが~  作者: 五十嵐 あお


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王都リプセット公爵家5

リプセット公爵家でのジョイスの役割は何も背負わないこと。二人の兄はそれぞれ当主とそのスペアという役割を担っているが、ジョイスには何もない。

その代わりと言っては何だが、ジョイスにはアルフレッドの側近という役割がある。でも、それもあと少しの話。

ジョイスは、本当に何も背負わなくなるのだ。それと同時に邸も出る。


どんな毎日を過ごすことになるのか想像もつかない。けれど、堕落しない為にも騎士見習いとなり、ジョイスが与えてしまった国、国民への直接数字になり現れていない負を少しでも償いたいと漠然と思っていた。公爵家に生まれ役割がないのに、恵まれた生活を送っていたジョイスのそれが次の役割に思えて。


しかし、ジョイスはそこに個人の感情を含ませることにした。個人の感情を優先して『今』を抱えているアルフレッドを間近で見ているというのに。けれどそこには自分を擁護するようだが、立場の違いがある。ジョイスはこれから私人になるのだから。


邸を出る餞にと、既に父にも甘えた。今までこんな甘えを父に言ったことはない。ジョイスの最大にして最後の甘え。それが叶うかは未定だが、駄目だった時のことは既に考えてある。


ジョイスが頼んだのは父の古くからの友人、キャストール侯爵に私兵として雇い入れてもらうこと。それもスカーレットがいるファルコールで。賃金なんてどうでもいい、ただ、今度こそスカーレットの気持ちに寄り添いたかった。スカーレットからアルフレッドの婚約者という役割を奪うことに加担したことを償う為にも。


しかし、数日前に別れたばかりのスカーレットを思うと、私兵になることが償いになるのか怪しくなる。

彼女、スカーレットはアルフレッドから婚約者という役割を取り上げられ、今度は自ら侯爵令嬢という役割を取り払いキャロルになった。

そして楽しそうにファルコールで暮らしていた。全ての役割を失いお気楽に過ごしているのではなく、新たな役割を自ら選び暮らしていたのだ。アルフレッドの婚約者時代は封じ込められていた感情を露わにし、生き生きと。

その姿を、その表情を守ることは償いではない、ジョイスにとって最高の褒美になるだろう。願わくは、幼い頃のような笑顔をジョイスの手で取り戻したい。


ファルコールに滞在する前までジョイスは、与えられていた役割を失うことがどういうことか具体的に想像が出来なかった。全てを失うとはどういうことだろうと。

ところが、それをジョイスが加担しその役割を失わせたスカーレットが教えてくれた。いくらでも自分の手で新たなものを掴めばいいと。騎士見習いになる云々の綺麗事で自分を繕わなくてもいいのだとも。その前にナーサに言われたことは片付けておかなくてはいけないが。


スカーレットがジョイスと関わりたくないと思っていることは分かる。でも、最後にジョイスの手を掴んだことも事実。

握った手を緩めれば、そこから逃れるのではなく再び握り返してくれた。

関わりたくないと思っているスカーレットが、ジョイスに本当に欲しいものを容易く手放してはいけないと教えてくれているようだった。

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