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オリハルコンの女~ここから先はわたしが引き受けます、出来る限りではありますが~  作者: 五十嵐 あお


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長距離移動をした後の前リッジウェイ子爵夫妻への夕食は、ポルチーニ茸とハーブのパスタに、チキンのトマト煮、それにミモザサラダ。毎日卵を食べたい薫が作るミモザサラダは花が咲き乱れ気味のものだが、そこは愛嬌。

まだ四十代後半の二人には、あまりあっさりし過ぎるよりはこれくらいがいいのではないかと決めたメニューだった。


「実はカーメル夫人(←前レヴァリアルド伯爵夫人のファーストネーム)から、こちらでとても美味しいキノコが味わえると聞いていたのよ。早速いただけるなんて嬉しいわ」


カーメル夫人は、今後キャストール侯爵家と高級乾燥キノコの王都販売独占権を視野に入れている。だから、味の宣伝をお茶会でしてくれていたのだ。


ファルコールのホテルはゲストを一組ずつしか取らない上に、キャストール侯爵の紹介がなければそもそも予約は不可能。ファルコールで味わえるキノコ類は非常に珍しいものになる。珍しい上に、美味となれば貴族達は挙って購入しようとするだろう。しかし、販売するレヴァリアルド伯爵家の人間しか食べたことがないとなると、味に対する信憑性が薄くなる。そこで、カーメル夫人は実際にファルコールへ向かう前リッジウェイ子爵夫人に宣伝したのだった。


王都でのカーメル夫人の宣伝活動を露ほども知らない薫は、純粋に前レヴァリアルド伯爵夫妻がファルコールのキノコ料理に喜び前リッジウェイ子爵夫人に話したのだと思った。

キノコをファルコールの産業の一つに育てようとしている薫には、食べた人が喜んでくれることは何より嬉しい。しかも王都で持て囃されれば、消費量が違ってくる。勿論、薫はカーメル夫人の思惑を知らないのだが、楽しみにして来たと言ってくれる前リッジウェイ子爵夫妻にも様々な料理を振舞い喜んで貰おうと思ったのだった。


折角なのでその夜、薫は簡単にキノコを楽しんでもらう一品を仕込むことにした。

題して『キノコと卵のマリアージュ』。要はマヨネーズ風味のキノコペーストだ。

ポルチーニ茸、肉厚シイタケ、タマネギを細かく刻みよく炒めてから熱を取り、自家製マヨネーズと塩コショウで和えただけだが、贅沢な一品となった。


「これはどうやって食べるのですか?」

「これはね…」

キッチンの傍にはまだケビン達が居た。


「ねえ、ナーサ、あの三人も呼んで味見をしましょう」

薫はそう言うと、少し酸味のあるドイツ風パンに出来上がったペーストを少しずつ乗せ、全員に振舞った。


「どう?」

「このパンにすごく合います!」

「これにチーズを乗せて、オーブンで焼いても美味しいんじゃないかな」

「それ、いいわね、ハーヴァン」

「ワインにも合うと思います」

「それもありだわ。わたしはまだ飲めないから味の組み合わせがピンと来ないけど、大人のノーマンが言うんですもの、きっと正解ね。明日の朝、お二人は喜んでくれるかしら」

「絶対喜びます!」


試食をしながら、楽しくアイデアを出し合う。なんて楽しいひと時だろうと薫は思ったのだった。

まさかこの一品が、王都のお茶会で話題を集めるとは知らずに。

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