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オリハルコンの女~ここから先はわたしが引き受けます、出来る限りではありますが~  作者: 五十嵐 あお


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王宮では1

さて、薫扮するスカーレット一行がファルコールに到着したころ、王宮のとある広間ではちょっとした催し物、その実非常に重要なものが開かれていた。


ちょっとした催し物なのは、王宮で開催されるには参加者が限られていたから。重要であるのは、王子の未来の妃の家を決めるからだ。


王子、アルフレッドの寵愛を受けるシシリアはカトエーリテ子爵令嬢。妃になるには身分が低すぎる。

寵姫として表に出さないのであれば問題ないが、公の舞台で王子の隣に立つならば難しい。立場上、他国の王族や高位貴族と顔を合わせるというのに子爵家出身では足元を見られかねない。あってはならないが、些細な失敗を犯せば身分が低い家の出だからと陰で様々なことを言われてしまう。


シシリアがアルフレッドの妃になった後ならば、それはシシリアへの言葉ではなくこの国が蔑まれることに繋がる。妃の器にないものを、王子の感情だけで娶るからだと。政治よりも感情を取る愚かな国だからこうなると陰で笑われるだけなのだ。


それを防ぐ為にも、薫は婚約解消時にシシリアへの策も侯爵へは伝えてある。薫ならばシシリアへ対し何かしてあげることはないだろう。しかし、薫はスカーレットの願いを少しでも叶えなくてはならない。それがこの体を受け継いだ理由なのだから。


王子から酷い扱いを受けようとこの国を愛していたスカーレット。だから薫が提案した策は、シシリアへではなくスカーレットの為。幸い、シシリアの成績は良かった。貴族学院での王子との接し方は淑女としてどうかと思うところはあるものの。


開かれる催し物は、『シシリア養女先選考会』だ。実際に侯爵へ伝えた時はもっとそれらしい名称にしたが、薫は心の中でずっとそう呼んでいた。


これはいくつかの有力貴族へ事前に声掛けをして希望のあるなしを確認し、実際のシシリアとの時間で最終判断を仰ぐというものだ。

食事を共にすることで、マナーを確認し、得意の楽器の演奏、外国語での会話であとどれくらい更なる教育が必要か判断出来る。


シシリアを養女に迎える家は、カトエーリテ子爵家が負担した違約金を含め、王家へ嫁がせるまでにどれくらいの額が必要か計算出来るという訳だ。そう、違約金はシシリア本人に付いて回るようにしてある。薫としては、これは本人が負うものとし、家ではなく本人に背負わせた。どの道支払うのは家だとしても。

だからこそ、養女先はシシリアを迎える時に違約金も負担しなくてはならないのだ。


金銭面で言えば、シシリアにとってこのことはマイナスからのスタートを意味する。政治で決められていた婚約をぶち壊したのだ、これくらいは受け入れてもらわなくては。前世で契約不履行が起これば、場合によっては莫大な違約金に繋がっていた。シシリアもこうしてお金が付いて回れば、今後契約の大切さを身に染みて理解するだろう。

と同時にこのマイナスを払拭し、養女先を得るくらいの気概を見せるチャンスでもある。それくらいの気持ちがなければ王子の妃など務まらない。ピンチをチャンスに変えるくらいでないと。


違約金の負担に、今後シシリアの為に必要となる費用。それらを踏まえ、集まった貴族家は掛かる費用とメリットを天秤に掛け最終判断を下す。王子妃になることが決まっている娘だ、ドレスも装飾品も一流でなければならない。しかも十年も妃教育を受けてきた侯爵家の娘を蹴落としたのだ、妃となる時には完璧でなければ。


一人の子爵令嬢を完璧な淑女、そして後の国母に仕立て上げるには金も、一流の品を短期間で手に入れるルートも、最高の教師を雇う人脈も必要。

だから、王宮でのこの催しに参加した貴族家が限られていたのだった。

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