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オリハルコンの女~ここから先はわたしが引き受けます、出来る限りではありますが~  作者: 五十嵐 あお


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その日のカトエーリテ子爵家5

子爵が爵位の返還だけではなく、王都から離れることまで決めたのはアルフレッドの手紙によるところが大きい。

手紙には本来子爵が知るはずのない、シシリアの成績を改竄した貴族学院の学院長や数名の教師についても書かれていた。


改竄はアルフレッドに阿る為。アルフレッドが傍に置くシシリアを優遇することで、いつか何らかの見返りを学院長達は期待したのだ。


閉ざされた世界で絶対的存在から、絶対的評価を受けたシシリア。自分の能力を疑うことなく信じた結果、まやかしを事実だと思ってしまった。


そして立場ある者達は、そんなことまでは考えていなかったと主張しようと事が事だけに重い罪に問われることになった。たった一人の学院生に対し行った改竄で、学院長を始め数名の教師は人生を棒に振ったのだ。

アルフレッドは隠すことなく、これは見せしめだと手紙に書いている。今後、貴族学院で同じようなことが起きない為の。


処分を受けた者達は貴族の次男以降だったが、解雇と共に全員平民へ落とされた。その上強制労働、しかもどんなに働いても自由に出来る金など一生手には入らない。地位、財産、家族など全てを失い、ただ働く毎日。

学院長達は改竄によって、国に混乱を招いた罪としてそこまでの刑が課されるとは夢にも思わなかっただろう。


しかしこれはまたシシリアを助ける為でもあった。

立場ある大人達が学院生だったシシリアを利用して国に混乱を招いたとするための。首謀者は大人達、シシリアは手段の一つに過ぎなかったというシナリオをアルフレッドは作りたかったのだ。

そうでもしなければ、シシリアに対し最悪の刑が待っていた。娼館送りという。何故なら、シシリアは婚約者のいる王子にすり寄り、誑し込んだ女として扱われただろうから。


シシリアがいくらアルフレッドを好きになっただけだと主張しても、誰もが聞き流すだけだっただろう。事実として、アルフレッドが婚約者だったスカーレットを排除した後では。



最終的にはアルフレッドの思惑が功を奏して、先導した大人と利用されたシシリアという構図が出来た。

だからシシリアは刑というよりは反省させる為に修道院へ入ることが決まったと、アルフレッドはそこに至るまでのことを子爵に手紙で伝えてくれていた。


問題はその先。世の中、二人の人間がいて片方だけが贔屓されれば、もう片方は贔屓された方を妬む。手紙には、シシリアの修道院送りに対し不満を持つ存在が少なからずいるであろうことが書かれていた。

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