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オリハルコンの女~ここから先はわたしが引き受けます、出来る限りではありますが~  作者: 五十嵐 あお


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その日のカトエーリテ子爵家4

子爵はシシリアが貴族学院へ入学してからのことを思い返した。それまで付き合いのなかった子爵家や伯爵家から声を掛けられるようになったことを。


親の贔屓目を抜きにしてもシシリアは愛らしい。だから子爵は思った、シシリアが貴族学院で身の丈にあった交友関係を築き、その中から将来の伴侶を探したいのだろうと。同等、若しくは一つ上の爵位、シシリアの選択は実に手堅い範囲ではないかと思ったくらいだった。


でも、それは違った。否、違わないでいてくれたらどんなに良かったか。

子爵家や伯爵家は、貴族学院でのことを子供達から聞き万が一に備えていたに過ぎない。良くて愛妾、悪くてアルフレッドに仕える侍女としてシシリアが王宮へ上った時のことを考えて。

その証拠に高位貴族家は声を掛けてはこなかった。アルフレッドとスカーレットの婚姻がどれだけ重要なことか理解していたからだ。分かっているからこそ、アルフレッドが学院生の間だけ物珍しいものに興味を引いただけと最初は捉えていたのだ。


しかし月日がいくら過ぎようと、アルフレッドの珍しいものへの目は飽きなかった。今なら分かる、子爵が公爵や侯爵から良く見られるようになったのはその頃だと。あの視線は警告だったのだ、シシリアを諭せ、弁えさせろという。シシリアがアルフレッドの学友として楽しく過ごしているなどと思っている場合ではなかった。もっと詳しく実情を探るべきだったのだ。


子爵家が既に支払ったスカーレットへの違約金。子爵家で積み立てていた資金や親戚から借りるだけでは賄えず、国庫からも借りている。

このまま子爵家として僅かばかりの領地を守り、農産物で利益を上げようとしても、もう無理だ。国を混乱させた娘がいる子爵家など貴族社会で爪弾きに遭うことは目に見えている。声を掛けてきた子爵家や伯爵家も、シシリアの養女先が見送られたあたりから手のひらを返したように接触してこなくなった。大々的に知らされていたことでもないのに、皆耳が早いことだ。次に早いのは噂話が広まること。変なケチが付く前に、子爵は爵位でも邸でも、今は金になるものを処分したほうが良いと考えた。

早々に決めた爵位の返還。この判断は間違いではない、しかも返すのも極力早い方が良い。


王宮からの通達とアルフレッドの手紙に目を通した後、泣き崩れた妻。抱きしめながら『爵位をお返しして親としての罪を贖おう』と伝えたが、爵位の返還は家族を守ることにも繋がる。


シシリアは問題を起こした子爵家の娘として修道院へ向かうより、平民としての方が良いだろう。今後同じ修道院へ他の貴族家の娘が送られて来た時の為にも。どれくらいの年月がシシリアの気持ちを慰めるのに必要かは分からない。けれど、事あるごとに過去を掘り返されればそれだけ時間がまた必要になる。


そして、まだ幼い息子と娘は貴族社会とあまり関わっていない。精々近所に住む同じような貴族家の子供達と知り合い程度。このままここを去ったところで、それだけのこと。平民として新たな暮らしを始めることに大きな抵抗はないはず。

なにせ子爵が考える新天地は王都ではない。大きく環境が変わるのだ、子供達には目新しいことだらけで過去を振り返っている時間はあまりないだろう。そして、その内新しい記憶が全てになる。


先程子爵が幼馴染に認めた手紙。それは住み込みで働かせて欲しいというものだった。頼んだことが受け入れられれば、子爵は直ぐにでも家財も処分し、キャストール侯爵領にある商家へ向かうつもりだ。よりによって、キャストール侯爵領。しかし、子爵にはキャストール侯爵領こそが一番安全に思えたのだ、二度とシシリアに関わる人物を担ぎ上げようなどと思う者がいないように。何故ならもう一人の娘、ナンシーはシシリアの幼い頃に似すぎている。これ以上、娘を利用され失わない為にも貴族社会から切り離すならばキャストール侯爵領しかないと思えたのだった。

下手な文章に独自の世界観。更にはなかなか進まない話だというのにお付き合いありがとうございます。タイトルもパットしないしので、いらっしゃる方はそんなにいないと思っていたのですが、久しぶりにPVをみたら案外ご訪問いただいていてびっくりしました。ありがとうございます。手が止まらないよう励みます。

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