表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オリハルコンの女~ここから先はわたしが引き受けます、出来る限りではありますが~  作者: 五十嵐 あお


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/673

10

ファルコールの館には予定日の昼過ぎに到着。研究員達は勿論出払っていたが、館の世話人が出迎えてくれたのだった。世話人は二人で、年の頃は四十代前半くらいの夫婦。薫の本来の年齢に近い二人に、つい親近感が湧いてしまったのはしょうがない。


「では、早速こちらを守る私兵のお二人を紹介しますね」

「私兵の方もこちらにお住まいなのですか?」

侯爵から聞いていなかっただけで、他にも住人がいるのかと薫は世話人に確認をしたのだった。


「いえ、彼らは当番制でこちらに駐在しています。研究所とその大切な資料や家畜を守るのが仕事です。これからは、スカーレットお嬢様の為に人数が増えるかもしれませんが」

薫が移り住むことで、迷惑を掛けるのは避けたいところ。後になって言うよりも、こういうことは先に伝えておかないと面倒なことになる。


「当番の私兵の方は今まで通りの人数で大丈夫よ。元々ファルコールは治安の良いところだもの。それに、私兵の方達の宿舎はここに来る前に通過してきたけれど、大して離れていないわ。そもそもあそこを通過しないとここに来ることは出来ないでしょ」


流石は騎士団を管轄するキャストール侯爵。研究内容と侯爵家の建物を守る為に、私兵の詰め所と宿舎を絶妙に配置している。

薫はたまたまファルコールという場所に惹かれ選んだが、この立地条件があったから侯爵は送り出してくれたのかもしれない。そしてそれは、侯爵がどれほどスカーレットを愛しているかの現れでもあるだろう。

だからこそ、薫はここでスカーレットとして幸せな日々を送らなくてはいけないと心に誓ったのだった。


でもそれは侯爵家のお嬢様として、のんびり暮らすことではない。まずは、スカーレットが愛する父が治める領と領民の為に出来ることを始めなくては。


当番私兵の紹介が終わると、薫は早速ナーサ達へと同じお願いをすることにした。そう、スカーレットお嬢様ではなくキャロルと呼んで欲しいと。まるで数日前のやり直しのように、それを初めて聞いた四人は顔を顰めた。それでも薫は譲らない。

「これからわたしがここで始めることの為にも、どうしてもキャロルと呼んで欲しいの。この場所でスカーレットお嬢様と呼ばれたら動き辛いもの」

「スカーレットお嬢様、始めることとは?」

「ここに来るまでに皆で考えたことがあるの。それを少しでも実現する為に、侯爵家のお嬢様スカーレットではなく、ただのキャロルとして過ごしたい。だから、お願い、スカーレットとは呼ばないで」


最終的には貴族学院で色々あったからこそ、このファルコールで違う名前でスタートしたいと薫は押し切った。そして、その日の当番私兵だったレイとショーンは王都でのことを聞くと怒りの表情を堪えるかのようにしながらキャロルと呼ぶことを納得してくれたのだった。

ナーサの悔しさで今にも涙が落ちそうな顔が加勢してくれたことは言うまでもない。


「出来れば貴族学院でのことはもう話したくないの。レイとショーンには申し訳ないのだけれど、他の方達へもわたしの呼び方と事情を伝えてもらえるかしら」

何回も同じ遣り取りを避けるべく、薫は悲しそうな顔で二人へお願いした。本当は話すのが嫌ではなく、面倒を回避したいのと、こういうことは人伝のほうが効果的だと考えたからだ。


「分かりました、キャロルさん」

伝言を引き受けてくれた二人を見ながら薫は思った。自分は死んでしまったというのに、この世界で楽しくやって行けそうだと胸が高鳴るなんて不思議でしょうがないと。

恋愛カテゴリー登録なのに、お相手が登場するまでに時間が掛かりそうです…

そして、話の進みに時間が掛かりそうな…、申し訳ございません。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ