闇に包まれる 8
ベルの案内で着いた洞窟は奥に行くと魔水晶が採れる洞窟だった。
「ベル、リディアはどこだ?」
ベルについて洞窟に入ると、目映い光が見え、側にはリディアが倒れていた。
まるでリディアを守っているようにさえ見えた。
「リディア!」
リディアを抱き抱えると体は氷のように冷たかった。
生きている。
微かにだがリディアの吐息はある。
しかしゆっくりだった。
生きてはいるが意識もなく、ぐったりしている姿に心臓が抉られるほどゾッとした。
リディアを抱き抱えたまま光を見ると、その雰囲気に直感でわかった。
これは精霊だと。
だが、闇の精霊ではない。
闇の精霊はこんな光を放たない。
「…誰だ?」
(…カレンの子孫か…似ているな…)
驚いたことに精霊が話しかけてきた。
しかも、先祖のあの魔女カレンを知っている。
カレンが関わりがある精霊はたった一つだ。
「…刻の精霊か。…まさか、リディアを助けたのか?どうして…?」
刻の精霊は沈黙したかと思うと話し出した。
その声は頭に響くようで、男とも女とも思えないような声だった。
(…この娘は幼い頃に私の妖精を救ってくれた。その時に礼として私は祝福を授けた)
「…いつ?リディアは妖精に会ったことがないと…」
(…私の妖精が力尽きかけた時、エルフの扉をつけてくれた。おかげで妖精は私の元に帰ることが出来たのだ。その後、迷子になったと随分泣きじゃくり森の外に連れて行ったが人に見られるわけにはいかないから少しだけ記憶を消した。…私をお化けと間違えてもおった…)
何となくわかった。
何故魔法の使えないリディアと一緒に時間が戻ったのか。
リディアが刻の精霊の祝福を受けて、その力に触れていたからだ。
そして、リディアのお化け嫌いはこいつのせいだ!
(今リディアの時間をゆるりとしている。私が去れば時間は正常に動き出す。すぐに暖めなさい)
「…カレンはブラッドフォードの図書館の地下にいますよ…」
(…知っている…)
そう言い残し、刻の精霊の光はあっという間に鉱山を突き抜けるように上り消えた。




