if〜消えた誘惑(アリシア)〜
レオン様のお茶会に呼ばれるようになった。
最初にレオン様が突然リディアに会いにアニスのお茶会にやって来て、お詫びにとその時のお茶会のメンバーを呼んでくれた。
それから、何度もリディアの友人も、とお茶会に招待された。
勿論リディアはレオン様とやって来た。
そして段々、リディアとお茶会をすればレオン様のお茶会に呼ばれると私達の中で秘かな噂になった。
多分高位の貴族や王宮には噂は届かなかったと思う。
そういう人達はリディアとお茶会をしなくても、レオン様とお茶会をする機会があるだろうから。
もう何度もお茶会をし、リディアはレオン様といつも見送っていたから、こっそりお茶会の後帰ったふりをして覗きに行った。
見つかってもいいようにわざと、ハンカチを落としてきたのだ。
そして、何を話しているのか気になったからこっそり行った。
リディアはレオン様を窘めているようだった。
「レオン様、お茶会の回数が多いのでは?私も花嫁修業がありますし、レオン様もお仕事がありますから、少し減らして頂けると嬉しいのですが」
「…仕事か…わかった…」
レオン様は、リディアに言われて落ち込んでいるようにも見えたが、苛ついているようにも見えた。
そして、レオン様はリディアに、花嫁修業があるのだろう、早く行きなさい。と言った。
リディアは一礼し、行ってしまった。
レオン様は、椅子にドカッと乱暴に座り、テーブルをバンッと拳で叩いた。
テーブルの上の水の入ったコップが倒れ、ポトポトと静かに水が落ちていた。
私はすかさずレオン様の前に何食わぬ顔で出た。
「すみません、ハンカチを落としてしまったようで…レオン様どうなされました?」
「君は…アリシアか…」
私はレオン様の前に跪き、上目遣いで話しかけた。
胸を強調したドレスも功を奏したのかもしれない。
「私にはお悩みを打ち明けられませんでしょうけど…」
「…大丈夫だ…何でもない」
そのまま、レオン様の手を撫でるように触れた。
「…お慰めが必要ですか?」
「…慰めてくれるのか?」
「はい、レオン様の為なら」
レオン様は人払いを元々していた為誰もいないせいか、跪いている私に抱き付いてきた。
首筋にキスをしたり胸を触ってきた。
だが、ここまでだった。
そして、レオン様は私を引き剥がし、無言で立ち去った。
最初だからこんなものかと思ったが、私には充分だった。
これで少しずつレオン様を落とせると思った。
リディアと婚約破棄をして、私と結婚すれば私は一生贅沢に暮らせる。
そして、身分が高くなるのだ。
お父様が、私の結婚相手に金持ちを探しているがどこも断られていた。
私はそいつらの上に立つのだ。
そして、この日からレオン様とお茶会の後、こっそり会うようになりある日、一線を越えた。
私は結婚できると確信したが、レオン様はいつまでも、リディアと婚約破棄をしなかった。




