差し出した手はとってくれる
夕食の後、アレクとヒースの二人で飲んだ後、やっと部屋に帰った。
寝支度を整え、リディアを迎えに行くと、侍女と明日の準備をしていた。
そういえば、狩りに行く服を持っていたのかと今さらながら気づいた。
「明日の服はあるのか？」
「乗馬する服ならありますよ」
「馬に乗れるのか？」
「乗馬すると思いますか？」
「全く思わんな」
やはり、リディアはインドア派だ。
貴族だから、服だけ揃えていたのだろう。
「マリオン、明日はリディアに膝掛けも準備してやってくれ。リンクスに言えば出してくれる」
「畏まりました」
マリオンは、では失礼します。と早々に部屋を後にした。
俺が来たから気を遣ってくれたのかもしれない。
中々優秀だなと思った。
「それにしても、リディアはアレクと知り合いだったのか？」
「宮中の夜会で挨拶したくらいですけど、お父様を知っていますから、私のことを覚えていたと思いますよ」
「レオン様とも知り合いか？」
「レオン様とも、今からだと１ヶ月前くらいですかね、宮中の夜会で挨拶ぐらいはしましたけど、二人で会いだしたのは婚約してからですよ」
「本当に挨拶ぐらいか？」
「挨拶の時に世間話ぐらいはしたかもしれませんが全く覚えていませんね」
だから、アレク様やレオン様と呼んでいたのかと納得した。
そして、淡々と話しながら、明日の服を見ているリディアが不思議だと思った。
レオン様のことはどうでもいいのかと。
どうしても気になり聞いてみた。
リディアは、聞くな、という感じで一睨みした。
「正直言うと、意外と平気でした。レオン様は元々大人しいですが、今日は特に大人しかったですし…それより明日は狩りですし、もう寝ませんか？疲れましたよ」
「狩りは嫌か？」
「面倒くさいですけど、ちゃんとお見事です、と言いますよ」
「一番にお見事と言ってくれるか？」
「では、オズワルド様が一番に山鳥を射て下さいね」
「弓は得意だから任せろ」
はいはい、と言いながら、差し出した手を取ってくれるようになり、リディアを大事にしているのが、伝わってきているのかと実感してしまっていた。
