図書館には魔女がいる
悲鳴と共にリディアが抱きついてきた。
よっぽどゴーストが怖いのか。
震えるリディアを抱き締め、落ち着かせようとした。
「リディア、落ち着け、これはゴーストじゃない」
「お化けですよ!ニヤリとしましたよ!出ないと言ったじゃないですか!?私を脅かしてどうする気ですか!?」
腕の中で小さくなって震えるリディアは可愛いかった。
「カレン、リディアを脅かさないで下さい。普通に出て来て下さい」
水晶から現れたカレンは、いつも通り水晶の上に足を組み座った。
まあ、足は裾の長いスカートだからあるのかないのか全くわからんが。
「なんだ?イチャイチャ出来て私に感謝せんのか?」
「カレンのせいで俺は浮気疑惑が掛けられてますよ」
「オ、オズワルド様…?」
リディアが腕の中で涙目で不思議そうに見上げた。
「リディア…可愛いな」
「なっ、何を言っているんですか!?離れて下さい!」
「嫌だね。怖いんだろ」
リディアに逃げられないようにしっかりと抱き寄せていると、ハッとした。
カレンが、肘を突いて見ている。
「お主、何をしに来たのだ?」
「用があるからに決まっているでしょう。カレンもリディアに会いたいと言っていたでしょう」
「なら、早く紹介せんか」
お前がリディアを脅かしたからだろ!
「ゴホン、リディア、この魔女がカレンだ」
「…魔女?人間ですか?」
腕の中で大人しくなったリディアが聞いてきた。
「偉大なる魔女カレン様だ」
カレンはいつも通り水晶に座ったまま偉そうに言った。
「…でも足がないんですけど!」
「リディア、カレンはもう何百年も前に死んでいる。この水晶に意識というか魂の一部を移しているんだ。意思のある水晶か喋る本だとでも思えばいい。それにカレンは俺の先祖だ。カレンの時間魔法がたまにブラッドフォードの当主に現れるんだ」
「リンクスが言っていたブラッドフォードの秘密とは?」
「カレンの水晶のことだ。当主は代々この水晶のある図書館を受け継ぎ守ることが義務付けられている」
リディアはもうわけがわからない感じで呆然とカレンを見ている。
「浮気ではなかっただろう」
リディアを抱き締めたまま見つめると、少し頬を赤くし、すみません。と言った。
「カレン、聞きたいことがあります」
「なんだ?」
「時間魔法の副作用です。もしかしたら、俺の寿命じゃなかったかもしれません」
「寿命?」
リディアがまた可愛い顔で見上げた。
「リディア、時間魔法には副作用があるんだ。体に異変がなかったから、俺の寿命が半年分なくなったと思ったが、リディアに副作用が出たかもしれん」
「寿命!?大変じゃないですか!」
「戻った分だけだから半年分くらいだ。特に問題ないだろう」
「でも、私のせいで!」
「リディアのせいではない。それに違うかもしれん」
カレンが言うには時間魔法の副作用には、寿命が戻った分無くなる者や戻った分の期間に魔力はそのままで魔法が使えなくなったりする者や、睡眠障害を起こしていた者がいたらしい。
「まさか、私が眠れないのは、時間魔法の副作用ですか?」
「そんな気がする。カレン、どうなんですか?」
カレンは、リディアをじっと見ており、そうだろうな、と言った。
「ブラッドフォード以外の者が時間が戻ったことはないから、初の事例だ。中々面白いぞ」
カレンはニコニコと話した。
そして、どうすれば良いか、カレンに聞いた。




