107/144

オズワルドは知り合いだった

「セシルはオズワルド様を知っているんですか？」

思わず聞き返せなかった私の代わりにライアが聞いた。

「はい、魔法草の買い付けに年に１、２度やって来ます。今年はまだですが…」

「最近結婚しましたので来られないかもしれませんね」

「まぁ、結婚なさったのですか。では来られないかもしれませんね」

「…オズワルド様がお好きでしたか？」

残念そうなセシルにライアが聞いた。

「まさか…ですがオズワルド様はお優しい方で父や母が私に辛く当たるのを注意してくれる唯一の方でした。私にもお優しくして下さりました。今年は来ないと思ってましたが…」

驚いた。オズワルドと繋がりがあったのだ。

そして、よく話を聞くとリンハルト男爵夫人は後妻でセシルの本当の母ではなかった。

セシルの母はもう他界しており、後妻と上手くいってなかったのだ。

「男爵達とは上手くいってなかったのか？」

「父と亡くなった母は政略結婚です。母は貴族でしたが魔法草の栽培が好きでそこを祖父に気に入られ父と結婚したそうです。私も母の影響で魔法草を育てていました。ですが、母が亡くなり後妻となった母は私を嫌いました。魔法草はお金になりますから止めさせることはありませんでしたが、貴族の娘のすることではないとよく言われ、父も段々母と同じになりました」

そう言いながらセシルは手を自分自身で握り締めていた。その手は貴族の娘と違い所々傷んでいた。

魔法草の栽培で傷んだのだろうけど、リンハルト男爵達はきっと手の手入れもほったらかしなのかと感じた。

その手がセシルの気持ちと重なるように痛ましく思えた。

「…別に貴族でも魔法草の栽培をしてもおかしくない」

そして、セシルに言った。

「昼食に行こう」

そう言うとセシルは少し照れたように立ち上がってくれた。