ライアは頼み事をされた
夜会から邸に帰り、使用人達も既に休んでいた。
しんと静まり返った邸に外から幽霊の叫び声のような風が吹いていた。
そんな中、レオン様に頼み事をされた。
「ライア、明日の昼食にセシルが来るのだが食事の前に彼女の顔を見てくれないか?」
夜会の後、邸のレオン様の部屋に呼ばれたかと思うとそう言われた。
確かにあのセシルという娘には明らかにわかる薄黒い痣があった。
しかし、あの痣を家族が放置しているのをなんとも思わないのか。
セシルに対するあの家族の態度はおかしかっただろう。
絶対確執があるぞ。
レオン様はなんというか甘い。
どこか抜けている。
余計なことに首を突っ込まないで欲しい。
突っ込みたいところは色々あるが、この坊っちゃんにはわからないだろう。
それでも、レオン様が人に何かしたいと思うのは少し成長したということなのだろうか。
そもそも、アレクセイ様の印象が強すぎてレオン様のことはよく知らないが、あのオズワルド様を怒らせるなんてどうなんだ。
オズワルド様に勝てるところなんて一つもないだろう。
オズワルド様は魔法使いの中でも一目を置かれる存在だぞ。
「ライア、聞いているのか?」
「ああ、痣みたいのがありましたね」
「魔素の強い魔法草で痣みたいのが出来てしまったらしいんだ」
「治すにしても魔素の種類にもよりますね。彼女は魔法使いですか?」
「そうは言わなかったが」
「まあ、診るだけなら…」
色々思うところはあるが、頼まれれば仕方がない。
そう返事をすると、レオン様はホッとしていたが、外からの叫び声のような風にビビっていた。
ガキかこいつは。
口には出せないがそう思ってしまった。
そして、表情も変えずいつもの笑顔でレオン様に大丈夫ですか?と言った。
「随分今日は風が強いな」
「あれはきっとお化け屋敷の風が吹いているのです」
「お化け屋敷?」
「近くに廃墟となっている不気味な屋敷があったでしょう?すきま風が木霊しているのでしょう」
説明すると納得したようで、やっとレオン様から解放された。




