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4-体育祭の終わり

午後の一発目は三年生の騎馬戦。


会長は完全に雰囲気で蹴散らしている。

村上さんは余裕でファンサをしているためキャーキャー言われまくっている。ライブかと勘違いするところだった。


村上さんが会長に勝負を仕掛けるもひらりとかわしている。思っている以上に運動はできるらしい。


最後まで2人の騎馬は崩れることはなかった。



クラス代表リレーと部活動対抗リレーは連続のため、クラス代表リレー終了後、入場口に逆走し、ユニフォームを上から着る。


「連続大変だねえ」


軽く佳奈先輩に労られながら、入場した。



男子運動部のレースは以前の練習よりも歓声が響いている。


「せっかく斎森くん男バスにいるのに、生徒会として出ちゃうのよねー」


残念そうに佳奈先輩は言う。

ファンが応援しやすいから生徒会で1チームあるのだろうが、先輩目線だと良い迷惑なのだ。


「生徒会って最小人数なんですね」


以前から疑問だったのだ。どうやって増やしているのか。今期の生徒会役員は三年生2人、二年生5人なのだ。


「三年生のお気に入りっていうの?直々に誘うらしいよ」

「選挙とかはないんですか?」

「ないねー。生徒会は信頼社会らしいよ」

「そうなんですね」

「なに、気になるの?」


佳奈先輩はにやにやと楽しそうに問い詰めるが、結衣にそんな面白い理由などない。


「中学の時生徒会だったので気になりました」

「へぇー」


想像した理由よりも呆気なかったため、つまらなそうにリレーを見つめる。

しっかりと生徒会チームは一位を取り、退場。


三年生と生徒会役員全員参加の借り物競走のため先輩と別れ、自席に戻る。


「おかえりー」


仲良くなったクラスメイトの佐々木さんや加藤くんが声をかけてくれる。


「流石西川だなー」

「流石だね。次はー…借り物競走か」

「生徒会に借りられたい人が続出するやつだな」

「あれ地獄だよね」

「基本嫌がらせみてーなお題なんだよな、役員は。かわいそ」


加藤は苦虫を噛み潰したような顔をする。佐々木さんも知っているようで、苦い顔をしている。


「まあでも、私は所詮モブだし関係ないかなー」

「モブはむしろあっち側だと思うよ?」

「あー、一理ある」


佐々木さんがあっち側、と指差したのは入場口付近に集まった生徒会のファン(ほとんどが女子)である。


「始まったみたいだよ」


合図のピストルの音。お題箱に走り、お題の髪を取り出した佳奈先輩が一直線にやってくる。


「櫛持ってない!?」

「佐々木さん持ってたよね」

「も、持ってるよ」

「一緒に来てくれる!?」

「私でよければ」


佐々木さんは連れ去られていった。


「櫛持ちの女子を探せとかマニアックな…」

「というか西川は持ってないのか?」

「カバンの中」

「なんだその微妙な女子力」

「私に女子力求める方がおかしい」

「意味わからん」


やれやれと両手を広げる。結衣は無視して競技を見ていた。


玲奈が連れ出されているのを発見したので注視する。


「お題は可愛い子!確かに可愛いですね!1位は村上くんです!!」


いつの間に玲奈に目をつけたんだろうか。チャラいことで有名な村上さんだった。


「おー…中山か。流石だわ」

「玲奈可愛いからねー。いつ目つけたんだろ」

「お前といるとなお引き立つな」


ちら、とこちらを見て馬鹿にするのだが、慣れっこの結衣には全く効かない。


「平均顔は目立たなくて気に入ってるよ」

「良いメンタルしてんなおい」

「玲奈と四年目なんだから慣れるに決まってるでしょ」

「なんか悪かったな」

「はーせめてイケメンに言われたかったわ」

「悪かったな!!」


むっとして大きな声で言われる。狙い通りだ。


「そーゆーことよ」

「お前口上手いな…」

「玲奈にもそんなこと言われた」

「中山も思うって相当だろ」

「将来営業職に就くしかないねー」


加藤と軽口を叩く。すると、再びA組に訪問者が現れる。


「おい、お前」

「え、私ですか?」

「そうだ。ついてこい」

「西川、お前何したんだ?」


腕を掴む菅野さん。不思議そうに加藤は見る。結衣の身に覚えはない。


「何もしてないよ」

「お前、午前中俺と会ったのに場所バラさなかったろ?」

「はい、それが?」

「信頼できる後輩、だ」


ぺらっとお題の紙を見せる。目つきの悪さが相まって、悪い取引に見えてくる。


「えぇぇぇえええ」

「お前足早いよな?行くぞ」

「西川ガンバレー」


加藤は苦笑いで手を振る。腕を引かれるままに席をでて、ゴールに引っ張られる。容赦ないスピードで走るので、仕方なく全力で走る。恐ろしいスピードで校庭を縦断。さぞ奇妙だろう。


「お題は…信頼できる後輩!なにかエピソードはありますか?」

「俺の居場所をバラさなかったことだ。あと、自分の競技じゃねーのに全力で走れるところだな」

「いいでしょう!一位、菅野さん!」


会場がざわつく。しかも、一部の男子は猛抗議しているようだ。


「このお題な、俺を陥れるためのやつなんだよ。信頼できる後輩なんでいねえだろって馬鹿にしてんだ」


そちらを見つめ、どこか寂しそうに小さく呟く。


「大変そうですね」

「心ねえな」

「私は菅野さんに借りられるなんてありえない!身の程を弁えろ!といじめられることを危惧しているので」

「蹴っ飛ばしとけよ」

「段持ちなので蹴ると犯罪になっちゃうんですよ」

「そーか。蹴っとけ」


一ミリも話を聞いていない菅野さんに呆れながら、結衣は笑った。




太陽が隠れ、火照った体を風が冷ます。


菅野さんとどんな関係だとクラスメイトに問い詰められ、一度しか会話をしていない結衣にとって、何も答えられるものがなかった。

つまり、めちゃくちゃ疲れた。


1Aの所属する赤組は準優勝で、体育祭の幕は閉じた。

体育祭終了直後のおまけ


「あ、玲奈ちゃーん」


下駄箱で、初めて聞く声。振り返ると、村上さんがいた。


「三連休空いてない〜?」

「あー、空いてないんですよ〜」


ナンパは慣れている玲奈、少しも動じない。


「え〜ほんとー?残念だなあ。あれ?お隣は…大夢と走った子?」

「そうですね」

「お名前は?」

「西川結衣です」

「結衣ちゃんか〜!可愛い名前だね。2人一緒ならどう?」

「ちょっと村上さん、僕らの後輩をいじめないでくれます?」


斎森先輩と篠田先輩が現れる。目線がめちゃくちゃ痛い。下駄箱の外の窓からさえも目線を感じる。


「いじめてないよ、ご飯誘っただけ。断られちゃったけど」

「ちょっと、玲奈ちゃんに手出さないでくださいよ!」

「お前らもう目つけてたのか〜そうか〜」

「言い方!!部活の後輩です!」


2人は言い合いを始める。微妙に馬が合わないようだ。


「今のうちに帰っちゃいな」


斎森先輩に促され、そそくさと玲奈と共にその場を離れた。

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