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3-体育祭

体育祭当日は、見に来た親族、興奮している生徒達でお祭り騒ぎだ。


まだ五月だと言うのに、気温は三十度を超え、熱中症が危ぶまれる。

それなのになぜ、校長の話というのは長いのだろうか。

結衣は心の中で愚痴る。


気づけば会長の話。

入学式とは違い、ありきたりなことを言っている。運動系ではなさそうだし、そこまで力を入れていないのだろう。


なんとなく残念に思いながら、太陽の暑さに耐える。



体育祭は始まった。



最初は100メートル走。タイムで走順を決めているらしく、結衣は1年生の中では後ろの方だ。


校庭に入場し、中心で待機している時間が一番暑い。


着々と結衣の番に近づき、ついにレーンに並ぶ。名前を呼ばれ、少し大きめに返事をした。

クラウチングスタートのため、地面に手をつき、ピストルの音に合わせて地面を蹴りだす。

周りを見るもことなく、当然のようにゴールテープを切る。


一位を取ったクラスメイトとハイタッチをして、入場口にいる玲奈と目を合わせた。自分より喜んでいる玲奈を見るとなんだか落ち着く。


またぼんやりと2年生のレースを見ていると、きゃあああと歓声が上がった。


結衣はスタートに並んでいる人達を凝視する。

斎森、河野、萩原、篠田。

生徒会役員の4人。本来5人で走るため、1人休んでいるようだ。生徒会と一緒にされた一般人ならおかしくはない。


パァンとピストルが鳴り、悲鳴が再スタート。応援的には篠田が優勢なようだ。

一位だったのは萩原だった。確かテニス部で、陽気な性格なため、男子にも人気だと噂だ。

一位の旗に並んでいる人達とハイタッチしながら後ろに向かうので、紛れてハイタッチしておく。


以降、これ以上盛り上がることなく100メートル走は終了した。



次に始まったのは二人三脚。玲奈が出場している。


玲奈の組の番になり、声援を送る。

玲奈はひらひらと手を振り、スタートに備えた。


問題なく折り返し地点まで行き、ゴール付近まで来た時に、玲奈は盛大に転んだ。


自席で軽く悲鳴が上がる。

結衣は、迷いなく水筒を持って退場口で玲奈を待った。


「結衣さん?」


背後から、幼い声が聞こえる。振り返ると、いつか注意した小学生。名前は確か、健人くん。苗字は、瀬田だったかな。


「あの時のー…健人くん?」


健人くんは不安そうな顔から、一気に笑顔になる。


「そうです!あの時はごめんなさい。もう、みんな走らなくなった。注意してくれて、ありがとうございました」


ぺこり、と頭を下げる。


「いいえ、約束守ってくれてありがとう」


にこにこと嬉しそうな健人くん。


「何をしている?」


人混みから現れたのは、会長の瀬田さん。もしかしなくても、兄弟ではないか、と結衣は青ざめる。


「知り合いか?」

「えっとね、この前話した、走ってるの注意してくれた結衣さん!」


ぺらぺらと結衣の情報を話す健人くん。やめてくれ、と切実に思う。


「そうか。弟がすまなかった。クラスと名前は?」

「1-Aの西川結衣です」


覚悟を決める。こんな早くから生徒会に目をつけられるとは思っていなかった。


「、、ああ、斎森の後輩か。じゃあな」

「え、あ、はい、お気をつけて」


ばいばーいと手を振る健人くん。恐ろしいほど似ていない兄弟だ。



周りがざわめき始めた。玲奈が退場口にやってくる。


「玲奈!!」


結衣の声に気づいた玲奈はふらふらしながらも笑顔を見せた。


「結衣〜転んじゃった〜」

「見てたよ。救護室行こう。飲み物も持ってきた」

「流石だよ結衣〜」


肩を貸して救護室に向かう。

人混みをかき分け、やっとついた救護のテント。


「一回洗って砂落としてきて〜」


先生にさらっと言われ、水道と救護室を往復する。


「あちゃー、サイズが足りない。えっと、西川さんは怪我してないわね?最大サイズの絆創膏を保健室から取ってきてくれる?外から入れるから」

「わかりました」


指示通り外から入るため、実行委員や学級委員、生徒会などの前を通る。


「あ、結衣ちゃーん」


声をかけられて、そちらを見ると篠田先輩。とこちらを見つめる役員たち。


「どうしたのー?」

「保健室に絆創膏を取りに行くところです」

「怪我したの?」

「玲奈が転びまして」

「あ、そうなの!?一緒に行くよー」

「え、あ、お仕事とかは?」

「今はない!から行く!」

「は、はい」


注目を集めるから正直言って断りたかったのだが、仕方なく一緒に行く。


「結衣ちゃん100メートル走一位だったね〜」

「あ、はい。でも先輩方のレースも凄かったですよ。熱気が」

「あれはね〜、なんか生徒会って昔からこんな感じで、アイドル化されてるらしくて。一般生徒と走ると生徒会が負けた時ファンが大変なことになるから、生徒会で固めちゃうんだって」

「大変ですね」


保健室のドアをコンコンとノックし、開けて入る。


「やっぱりいたー」


目線の先にいるのは、目つきの悪い男性。見覚えがある。菅野大夢さんだ。


「んだよ」

「僕たちは絆創膏取りに来ただけだよ!ねー」

「は、はい」


お前はついてきただけだろ!とも言えず、棚を漁って絆創膏を探す。


「絆創膏?基本のサイズならテントにあるだろ」

「最大サイズを探していまして」

「最大?どんな怪我したんだよ。その棚の左上だ」


指示通り左上を見ると、たしかに大きな絆創膏がある。


「ありがとうございます」

「俺は知ってることを教えただけだ」

「ツンツンしちゃって!さて戻るか〜!」


ぺこ、と頭を下げて救護テントに戻る。たまに目線が痛い。


「西川さんありがとう〜。はい、これでおっけー」


気をつけなさいよ〜と去り際に言われ、肩をすくめる玲奈。


「いやー消毒痛かった」

「おつかれ」


学級委員の席に玲奈を送り、自席に戻る。

すぐに昼食で再会するのだが。

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