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2-結局目立つ


生活が落ち着いてくると、次にやってくるのは定期考査だ。


中学の頃と同様、玲奈と近くのファミレスで勉強会を行う。


「神様仏様結衣様だよ〜」

「そんなことない、教えるのも勉強になるから」

「神〜〜。ん?」


玲奈の動きが止まる。目線の先を見ると、小4程度の少年3人が走り回っている。


「注意した方がいい…よね?」

「一回ぶつかって注意してくる」

「当たり屋じゃん」


ぺろっと舌を出し、席を立つと、宣言通り少年にぶつかる。


少年は謝ることなく去ろうとする。


「あ、待って。ちょっと私の話を聞いてから、一つ約束して欲しいんだけど」

「お前誰だよ!」


ぶつかった子ではない、気の強そうな少年が吠える。


「私は西川結衣。君達は?」

「…細田蓮」

「瀬田健人」

「川島俊」

「私の、お願いを聞いてくれたら、そこのガチャガチャ一回ずつ買う。だから、聞いてくれる?」

「絶対買えよ!」

「私は約束守る人だからね。まず、ここで走るのは危ないのはわかる?」


少年達は目をそらす。


「かなり人が歩く。しかも、物を持った人が。もし、店員さんが熱々のお肉を持って歩いていて、それに気づかずぶつかってしまったら…」


想像して、縮こまっている。思っていた数倍素直なようだ。


「危ないよね。だから、歩いて欲しいんだ。だから、私と約束。ここでは走らない。いい?」


こくこくと頷く。素直なので可愛く見えてくる。


「うん、ありがとう。じゃあガチャガチャ買うよー」


約束通りしっかり買い、歩くんだよーと釘を刺してから席に戻る。


「結衣ってさぁ…話上手いよね」

「言い方が悪徳詐欺師じゃん」

「なれるね」

「なりたくないよ。進んだ?」


仕返しのつもりで話を変えると、明らかに目が泳いでいる。ずっと見てたから進んでないのだろう。


「そんなことよりさ、体育祭!テスト終わったらすぐだよね?」


玲奈は慌てて話題を変える。


「そうだね」

「クラス選抜リレー出るでしょ?」

「え?出る気ないけど」

「足速いのバレてんのにどうやって逃げる気よ」

「えぇー…」

「大忙しだね」


玲奈はにやにやと笑う。反撃できて嬉しいのだろう。

玲奈のテストは無事終わるのか、心配なところである。


ーーー


「この時間で実行委員とクラルリレーの選抜者を選ぶぞー」


テスト最終日、終わりのホームルーム。柳原先生はいつもより力が入っている。


「まずリレー。足速いの誰だ」

「西川さん」「和田」「加藤さん」「河村くん」


あちこちで声が上がる。結衣は、その中で玲奈が一番に結衣の名前を挙げたのを聞き逃さなかった。


「待て待て、順番に言え。西川と和田と加藤と河村であってるか?」


柳原先生の前世は聖徳太子だろう。


「反対がなければこの四人で決定するぞ」


拍手が巻き起こり、選抜者は決定した。


ここで反論する方が目立つことを知っている結衣は、静かに諦めた。



最終日が金曜日のため、部活もすぐに始まる。

そして、そこでもまたリレーのメンバーを決めることになる。


「私は部長だから確定なんだけど。勝ちたいから、学年関係なく速い子を出したい。ということで、50メートルのタイムを、鈴木から左に」


結衣のタイムで周りがざわつく。ここでも、選抜は免れないようだ。


「速い順に、結衣ちゃん、春香、真夏ちゃん、私だね」

「じゃあ決定」


結衣は小さく肩を落とした。


ーーー


「あ、玲奈ちゃん!次移動〜?」


入学式で見た記憶のある人。篠田優希さん。生徒会で、人柄も良く見た目も良いため大人気で、校内の有名人だ。


「あ、篠田先輩。そうです、移動です」

「そっかー!お隣は?」

「西川結衣です」

「結衣ちゃんね!ああ、本題忘れるところだった。あのね、今日は部活選抜リレーのリハーサルがあるから部活は中止。クラスの子に伝えといて。よろしく〜」

「了解です」


ばいばーいと言いながら去っていく。嵐のような人だ。


「今日は部活リレーの練習あるんだ?」

「そうだよ」

「結衣見たいから残ろうかな」

「お、頑張っちゃうぞ」

「まって、バド部に負けてくれる?」

「やだよ」


ーーー


体操着に着替え、校庭に出ると、観客だらけだった。


どうやら、部活対抗だけでなく、生徒会として1チーム出るらしく、その応援だという。


「あ、結衣ちゃんも出るんだ!」


篠田先輩が大きな声で言ってしまったため、生徒会応援団の目が集まる。


「はい、出ます」


困り顔をしながら控えめに答える。


「優希、うちの後輩を困らせないで」


現れたのは、斎森先輩。ありがたいけどありがたくない。さらに敵を増やした感覚がする。


「え!?バスケ部なの!?確かに身長高いなと思ってた…」

「西川さん、ごめんね」

「あ、はい、いえ」

「どっち?」


彼らはけらけらと笑いながら男子レースの説明を聞きに行った。


リハーサルが始まる。


女子文化部、運動部、男子文化部、運動部の順にレースをする。生徒会はなぜか運動部と共に走るらしい。


ギリギリまでバトンパスの練習を行う。


結衣は一番手なのでスタートダッシュに命をかける。


パァンと合図が鳴り、地面を蹴り出す。玲奈の応援を聞き分け、一位で春香先輩に渡す。



抜かれることなく一位でゴールした。



「結衣ちゃんすごいよ!!!」

「ぶっちぎりで貯金ありまくりだったね」

「余裕もって走れたよ」


3人に褒めちぎられる中男子運動部ののリレーがスタート。


どこまでも響く黄色い声。

みていなくても誰が走っているかがわかる。


当然のように一位ゴール。アンカーは斎森先輩。


退場したのちに校庭に集合する。結衣はほとんど聴いていない長い話が終わり、解散が言い渡された。


「結衣ー!!!」


こちらに全力疾走してくる玲奈。


「玲奈、制服なんだから走らない方が…」

「結衣凄かったよ!!!相変わらず足早いね!!」


結衣の話を全く聴いていない玲奈。1人でに興奮して喋っている。


「結衣ちゃん大活躍だね〜!」


背後から声をかけられ驚いて振り返ると、斎藤さんと篠田さん。


「結衣はすごいんですよ!!!!」


物怖じしない玲奈。結衣は1秒でも早く逃れて注目されないところに行きたかった。


「西川さん」


ちょんちょん、と肩を突かれ、水道を指差される。そちらに行こうという意味らしい。


「いやあ、元気な子といると多めに体力使っちゃうよね」

「そうですね」


水道で手を洗いながら話す。


貴方といても体力ゴリゴリ削れます、とは言えず。


「西川さんは落ち着く雰囲気してるよね」

「そうですか?」

「うん。居やすいっていうか、雰囲気が柔らかいって感じ。生徒会に欲しいよー…カオスだから」


確かにイケメンの渋滞はしそうだな、と結衣は小さく笑った。

斎森は斜め上を見ながら想像しているようだ。


「だって、堅物会長に、元気な優希、チャラい村上くん、ヤンチャな大夢、機械オタク慎司、お笑い咲也。カオスだよ」


入学式で見たのは一部だと思っていたが、あれで全員らしい。全員美形のため、仕事をしない恋愛目当ての人間が寄ってきたりなど日常茶飯事だと結衣にも想像できる。

最少人数で活動していることに驚いた。


「オールスターですね」

「よく言われる」


ふふ、と嬉しそうに笑う。生徒会メンバーはカオスだと言いつつ楽しんでいるのだろう。


「あ、気付いた」


気づかずに勢いで喋っていたのだろう。玲奈は再び走ってやってくる。


「ちょっと!いつの間にか居なくなってるんだけど!」

「気づかないのがおかしいと思うよ」

「えー!?そんなことないよ!ですよね先輩!」

「ほんとほんと。勝手にいなくなるの酷いよね〜」


2人でぷりぷり怒っている。

結衣は連れ出された側なので責任は斎森にあるだろう、と斎森の方向を見ると、にこやかに見守っていた。


「おい、会議の時間過ぎてんぞ」


ヤンチャで有名な菅野さんが廊下から顔を出し、不機嫌そうに睨む。

「え!?ほんとだ!!!じゃあ、2人は気をつけて帰ってね!!」

「うわー、優希のせいだから。また明日〜」

「なんでよ!」


口喧嘩をしながら走っていく3人。

お疲れ様です、と一応言ったが聞こえているかは不明だ。


「帰ろっかー」


おまけ


○○○


テスト返し。丁寧に学年順位を教科毎に書かれた紙とともに返却される。


「結衣〜!!」


机をバンバンと叩き、興奮しているようだ。


「なになに?」


覗き込むと、玲奈の苦手な数学が平均点を7点上回っている。


「数学が!!!平均より上!!!!ありがとう!!!」


玲奈は教えてくれたおかげだというが、結衣は平均点ど真ん中であった。


○○○

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