数字は幾らでもいじれる
商業都市のゼルトブルクは、奴隷貿易や麻薬貿易や武器貿易や売春や恐喝などありとあらゆることで、支配権を得ようとしている。
オストマルク王国は、そのようなゼルトブルクの支配下に置かれている場面も目立つ。
トリスタンが国王になったのだが、それをすぐに正すことなど、できることではない。
色々なしがらみが絡み合って、オストマルク王国はできているのだ。
過去があるから、今があるのである。
ブラックな会社のバイトの店長は、売掛金の売上数字については、いくらでも誤魔化せると言っていた。
売上については、未入金で処理をして、後にツケを回せばいいと言ったところだ。
ただし、後になればなるほど、数字が大きくなるので、早めに対応しなければならないそうだ。
営業などの仕事をしている場合、売上数字が、ゼロでは確実に上司から怒られてしまう。
それは、どこの会社や組織も、ボランティアではないからだ。
仕事には、成果が求められる。
数字がゼロならば、仕事をしていないと見なされるのである。
成果が求められないのは、自宅警備員位なのだろうか。
だから、『働いたら負け』なんて、くだらないことを言う連中が増えるのだ。
『働かざる者食うべからず』が、正しい対応となるだろう。
それは、この勇者のいる拠点の村でも同じようにするつもりなのだ。
営業マンは、怒られるのが嫌で、数字を誤魔化すことが多い。
『天ぷら』は営業マンの専門用語で、中身の無い契約のことを表す。
つまり、怒られないための数字を誤魔化すテクニックであるとも言われている。
ただし、結果がゼロのモノは、何をどうあがいてもゼロである。
今は良くても、後で振り返れば、絶対に齟齬がでてくる。
つまり、捻じれが大きくなって、とてもではないが、始めの状態と違うことになるのだ。
営業マン単位で、このような『天ぷら』をすることは身近で良くあるかもしれない。
しかし、オストマルク王国では、この『天ぷら』行為を日常茶飯事で行っていたのだ。
そのようなことをすると、すぐに【信用】に傷がつく。
【信用】に傷がつくと、どうなってしまうだろうか。
成果が上がっていないのに、上がっていると言って、結果として破産に近い形となってしまった。
多くの商会が、商業都市のゼルトブルクの支配下となってしまっているのである。
会社単位であっても、このようになるのでは、村や街や国家単位となるとどうだろうか?
オストマルク王国の貴族の1/4は、ゼルトブルクの支配下になり、なんでも言うことを聞くようになっている。
そして、徴税権まで、商人どもに売渡していることも見受けられるのだ。
『領地経営』では、このような悲惨な場面に出くわす場合も多くなる。
上がクズだと下もクズになるのだ。
確かに数字は、わかりやすい。
数値化して、『見える化』することは、とても大切である。
いくら、感情的に、大きい・小さいと言っても、そんなことでは相手に通じない。
共通の言語が必要となるのだ。
その数字と言う共通言語によって、相手としっかり話し合うことが重要となる。
しかし、その数字を鵜呑みにしてはならない場合もあるのだ。
見るべき指標が違っている場合もあれば、インチキな捏造の数字を公表している場合もあるのだ。
つまり、【プロパガンダ】である。
大きな国だからと言って、すべて正しいことを伝えているワケではない。
『フェイクニュース』と言われるモノもあるのだ。
やっかいなことは、『フェイクニュースだ』『フェイクニュースだ』と言っている側が、フェイクニュースを流している場合もあることなのだ。
オストマルク王国でも、このような流言が多く使われた。
相手を潰すために、どんな卑怯な手でも使うのだ。
相手の【信用】を落とすためや、自分を有利にするために、世間を欺く行為をするのだ。
これによって、先代の国王の時代にオストマルク王国は、内部からズタズタに引き裂かれたのである。
貴族や商人などに、いいようにされてしまったのだ。
魔王討伐の為に、借金に借金を重ねているところに、軍事費などのお金が尽きて、王都を奪われてしまったのだ。
しっかりとした『領地経営』をしていれば、魔王軍に攻め込まれる隙を与えることはなかっただろう。
軍事力だけならば、充分に魔王の侵略に対抗をすることができたはずなのである。
しかし、内政をしっかりとせず、王族や貴族が好き放題にしていたので、一番大切な王都を奪われたのだ。
数字の管理は、大切であるが、しっかりと内容を吟味しなければならない。
誤った数字を信じていると、簡単に騙される。
自分自身に甘いことを言う人間などを見分けなければならないのだ。
チヤホヤされて、あやまった数字などを信じると、後で痛い目に遭うのである。
『プロパガンダ』を仕掛ける側になることによって、影響力を持つ媒体を知ることになる。
そして、色々と結託して【嘘】の情報を流すことも可能となるのだ。
「真実は一つ」と言われるかもしれないが、バレなければ何でも有りにすることも可能なのである。
無知な領民をいかに乗せるか(騙すか)も『領地経営』の裏側でもある。
戦記などと同じように、表の派手なところと、裏側のドロドロな部分も存在する。
戦記などでは、英雄と評されるかもしれないが、裏側では相手の民を虐殺したりしているのと同じなのだ。
見方が変われば、色々なモノが見えてくる。
文明国家と言われていても、所詮は人間なのである。
いろいろな所で、誤魔化しがある。
投票の数字だって、買収などをして、平気で弄ることもできる。
メディアの数字だって、当てにならないのだ。
ゼルトブルクの支配下にあるような商会の報道を信用することができるだろうか?